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2008年2月15日 (金)

「自衛隊の誕生」

少し前に買った本。タイトルからして絶対に読めるだろうと思って買ったのだが、いざ読み始めてみると思ったよりも進まなくてそのままになっていた。最近、自衛隊のあれやこれやを調べているので、今なら読めるかもしれないと思って読み始める。
知られている通り、陸上自衛隊は1950年の警察予備隊に端を発し、1952年に保安隊に発展し、1954年に陸上自衛隊となった。この間、再軍備のイニシアチブをとったのは米軍だった。ソ連に接する北海道の防衛に危機感をもった米軍は、数個師団を早期に戦力化して北海道に配置することを求めた。その裏には、米軍を日本から撤退させて防衛を日本に任せたいという思惑があった。日本はこの思惑に抗し、経済力にみあったバランスのとれた防衛力整備を主張した。結局米軍は折れ、最終的には18万人体制ができあがった。旧陸軍出身者は少なくとも再軍備の過程では大きな役割は果たさなかった。創設当時、警察予備隊の総司令官にあたる総隊総監、そして4つの管区隊総監は全員が官僚出身、ほとんどは旧内務省の警察官僚だった。実際に訓練をはじめてみて部隊指揮官の能力不足が露呈し、大佐級までの旧軍人の入隊が実現したのだった。
いっぽう、海軍の再軍備構想は敗戦のその日から始まった。旧海軍軍人の間には、敗戦の負い目はあっても開戦の負い目は少なかった。海軍善玉論にのって、いつか海軍を再建すべきという思いが根強く残った。しかしそれが表面に出てくるには国際情勢の変化が必要だった。朝鮮戦争の勃発によるアメリカの戦略の変化、それにともなう警察予備隊の創設は、海軍再建論者にとっても追い風となった。旧海軍関係者を中心に再軍備に関する研究が行われ、米海軍の一部の協力を得て具体化していった。問題を複雑にしたのが海上保安庁との関係である。結局、海上保安庁に付属する形で1952年4月に海上警備隊が発足したが、わずか3ヶ月あまりで独立して保安隊と合流、警備隊となった。海上保安庁はコケにされた形となり、その後の海保と海自の関係が円滑を欠いた一因になったのではなかろうか。初代の警備隊総監および幕僚長は海上保安庁から出たが、自衛隊発足後まもなく運輸省に戻り、以後旧海軍出身者が主流を占めた。
もっとも遅く発足した航空自衛隊は、もともと旧陸軍の航空関係者に根強かった「空軍独立」論者と、やはり陸軍航空隊からようやく独立を果たした米空軍の合作になる。航空戦力は陸海軍から独立するべきだという共通の基盤が彼らにはあった。実際に航空戦力が保安隊(陸上自衛隊)や警備隊(海上自衛隊)で戦力化される前に、航空戦力を統括する指揮機構を準備しておかなくてはいけないという焦燥感に駆られたのである。実際、1953年には警備隊指揮下に館山航空隊が開設されていた。しかし当時の米軍上層部には、航空戦力は米軍が担当して日本には保有させないという考えが強かった。それが覆ったのは、旧軍(海軍も加わった)航空関係者と米空軍による働きかけの結果、バランスのとれた防衛力を日本に保有させるという政策転換が米中央政府で行われたからだ。トルーマン民主党政権からアイゼンハワー共和党政権に変わったことも影響しているだろう。そういう意味では、航空自衛隊は日本の旧軍関係者と米空軍の「共同制作物」である。
用意周到頑迷固陋、伝統墨守唯我独尊、勇猛果敢支離滅裂と言われた三自の気質の違いもここに発端があると言えるだろう。統合運用が始まり、さらには内局と各幕の再編一体化がささやかれているが、こうした50年におよぶ「伝統」を突き崩せるか。

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