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2008年5月24日 (土)

宇宙基本法は成立したけれど

ついに成立した「宇宙基本法」について、マスメディアではもっぱら防衛利用を解禁したというニュアンスで報道しているが、三十一から見ればそれは枝葉末節である。

某国営放送の論説では、現在の宇宙開発の現状はアメリカ、ヨーロッパ、ロシアが先端を行っており、これに中国、日本、インドが続いているとしていた。日本はついに中国に抜かれ、インドにも抜かれそうだと評価していた。
三十一の評価は少し違う。中国にはとっくに置いていかれ、インドにもある意味すでに抜かれている。中国やインドにとって日本はすでにライバルですらない。彼らの最大関心事は前を行く3強に追いつくことで日本は眼中にないと思う。

三十一から見ると「日本の宇宙開発」は--あえて「日本の宇宙開発」と呼ぶが--どこに進もうとしているのかまったく見えない。大きな流れとしてはH-2Aに加えて増強型のH-2B、新開発のGXロケットで商業打ち上げに乗り出そうとしているようだが、先日も触れたとおりまったく受注につながっていない。それどころか、商業打ち上げの事業主体さえ明確ではないのだ。商業打ち上げのために営業活動を行なっているのはどこなんだ? JAXAではない。打ち上げ業務をJAXAから移管された三菱重工かなあ。しかし三菱重工は官需主体の企業体質で、開発が正式にはじまったMRJについても、技術面のほかに営業面の弱さを指摘されている

アメリカ、ヨーロッパ、ロシアはもちろん、中国やインドは商業打ち上げ受注のために活発な営業活動を繰り広げている。はじめのうちはもちろん実績のなさをつかれてディスカウントした価格で勝負するしかなかったが、あえて出血覚悟で受注と打ち上げを続けているうちに実績は作られる。中国のCZシリーズも、インドのSLVシリーズも、着々と実績を積み重ねて来ている。いっぽうの日本は未だに実績ゼロだ。これで「抜かれそう」なんていう呑気なことを言ってる場合かねえ。

内閣に「宇宙開発戦略本部」をもうけて省庁横断的に戦略を練ろうという発想が、こういった現状認識の上に立って何らかの戦略的な方策を立てねばならないという危機感のもとに生まれてきたものならば、そこから出てきた結論がどんなものであれまだ期待できる。だがしかし防衛官僚と防衛産業がまだまだ貧弱な日本の宇宙航空産業を喰い物にしようという思惑のもとに生まれてきたのだとすると、何をか言わんやである。

真面目に商業打ち上げに乗り出すつもりなら、アメリカのユナイテッド・ローンチ・アライアンスやフランスのアリアン・スペースのような(たとえ半官半民であったとしても)企業体として営業・受注・打ち上げに責任をもつ組織を立ち上げるべきだろう。ロシアの場合は、各ロケットメーカーが主体となって打ち上げを受注している。「宇宙開発戦略本部」でそういう方向性が出ればいいのだが。もちろんその場合も、国が強力にバックアップする必要がある。親方日の丸にするという意味ではなく、顧客である打ち上げ依頼企業に安心感を与えるために、それは必須だ。

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