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2008年7月15日 (火)

防衛省・幕僚監部の改編案

防衛省改革最終案 (DSI 日米国防組織情報 HOT TOPICS)

もともと、内局と各幕僚監部を統合して運用部門を内局の1部門とする防衛省案と、基本的に今の枠組みを残しつつ制服と背広が人事的に相互登用するという官邸案が出ていた。結局、五百旗部防衛大校長が主導する官邸案に軍配があがったことになる。

三十一としては適当なところに落ち着いたと思う。防衛省案は制服組を背広組の下に置くことになり、内局の背広組の意図が疑われる。制服組の士気によい影響は与えないだろう。制服の統合幕僚長と背広の事務次官が並列して大臣を補佐する体制を維持するとした官邸案のほうが結局は機能するのではなかろうか。

最終案のキーポイントの第一は、これまで幕では課長以上の職に就けなかった背広組を幕の副長クラスまで登用し、いっぽうこれまで内局で課長になれなかった制服組を内局の次長クラスに登用するとしていることだ。つまり、これまで「制服組の幕」「背広組の内局」と縄張りが決まっていたのを、比較的高いレベルまで人事交流させようというのだ。幕の課長職は1佐クラス、それも新任1佐にはまずまわってこない。内局でも課長の上には参事官クラスの局長しかいない。だから課長クラス以上でよそから人材がやってくるというのはかなりインパクトがあるはずだ。もっとも、幕の各部に副長(正確には副部長)が置かれているのはごく一部に過ぎないし、内局でも局次長職があるのは防衛政策局と地方協力局くらいだ。この交流人事のために副部長/局次長を増やすというのはこのご時世に難しいだろうなあ。実際には課長職がメインになるだろう。シンボル的に防衛政策局次長あたりに制服組が、幕総務副部長あたりに背広組が配置されるかもしれないが。

第二のポイントは、内局の運用企画局を縮小してその機能の大半を幕に移し、内局に残った分については防衛政策局の管轄としている部分。つまり、運用企画局は機能を分割されて廃止の方向となる。もともと運用企画局の前身である運用局が1997年に設置された(2006年運用企画局に改編)ときから幕との役割分担が不明確で存在意義を疑問視されていたらしい。この最終案がそのまま実現するとなると、運用局/運用企画局は10年あまりで姿を消す徒花になってしまう。運用企画局の機能を大部分うけつぐことになる統合幕僚監部運用部は、部長に将をいただくこともある(現部長は林一也陸将)重量級の組織だ。統合幕僚会議を廃止して統合幕僚監部を設立した最大の眼目が統合運用であるから、運用部は統合幕僚監部の根幹と言っていいだろう。内局に運用企画局を残している現状では、統合運用も画竜点睛を欠いていた。今回の措置でより統一された統合運用の実現が期待される。

また、防衛参事官制度を廃止するとしているが、これは自衛隊創設当時の「文民統制をなにがなんでも維持しなくては」という強迫観念の産物で、すでに意味を失っている。意味を失っているというのは、もはやそんな制度に頼らなくても文民統制は確立しているからだ。

最後に三十一の希望を述べるなら、せっかくの機会なので統合幕僚監部の機能強化をさらに進めてほしい。特に三十一が気にしているのは統合された自衛隊としてのドクトリンの策定だ。専門家でない内局の背広組にドクトリン策定をまかせるのは無理がある。といって、これまでのような三自の各幕が別々に防衛計画を立てているようでは実戦で有効かどうか疑問だ。統合幕僚学校で研究はされていただろうが、あくまで学校は学校で執行機関ではない。各幕の防衛部を廃止して統幕の防衛計画部に統合するぐらいの思い切ったことをしてもいいんでなかろうか。

それからひとつ懸念点。背広組と制服組の交流はけっこうなのだが、どうも官僚のやることとして特定のポストがそれぞれの「既得権益化」しそうな気がする。つまり、「某部の某課長は背広組のポスト」といった具合に既成事実化し、逆に背広組以外はそのポストに就けない、ということになりかねない。だいたいこれまでだって内局の経理局長は大蔵省からの出向組のポスト、装備局長は通産省からの出向組のポストなどとみなされていたからねえ。両局が統合されて経理装備局長になってからは少し風向きが違うようだけど。

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