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2008年7月17日 (木)

「世界の歴史20/近代イスラームの挑戦」

この本はたぶん911の直前くらいに執筆されたものだと思う。

三十一の印象では、古典的な発達史観はすでにその役割を終えている。複数の文明、または文化圏を比較してどっちが進んでいる遅れていると評するのはナンセンスだ。そういうレッテル貼りは非建設的だということが歴史学者の間ではかなり共通認識になっていると思う。
しかしいまだに「アフリカは遅れている」「イスラムは前近代的だ」「中国は遅れている」「日本は欧米に比べて・・・」という論調があとを立たない。単に「先進国」の真似をしたところで、その文化圏の実情に合わなければ進歩にならない。何をどう組み合わせて選択するかはそれぞれの状況と立場による。そうした選択の結果は、前例のないまったく新しい発展段階を示す。万人に共通の完璧なカリキュラムなど存在しない。

で、イスラームだ。

19世紀はイスラームにとって「もっとも長い世紀」だった。それは端的に言ってしまえば西欧的価値観との衝突である。イスラームと西欧の価値観の違いはその頃に始まったものではない。ムハンマドの時代からそれはあったのだ。十字軍も西欧とイスラームの衝突の現実化という側面をもつし、15~17世紀頃のオスマン帝国のバルカン進出、ウィーン攻囲もそうである。その頃にはイスラーム側が優勢だったのだが、19世紀には西欧側が優位に立った。それだけのことだ、と言いたいところだがそうもいくまい。19世紀の西欧の世界進出はそれまでの衝突と本質的に違っている。その違いを引き起こしたのはやはり産業革命だろう。産業革命は結果として圧倒的な力の差を生んでしまった。このインパクトがあまりに強すぎたために「産業革命を経た西欧ふうの発展」が唯一絶対の「カリキュラム」だと受け止められたのかもしれない。イスラームやその他の社会はそれに対抗できるだけの「カリキュラム」をいまだに提示できていない。

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