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2009年3月28日 (土)

日出ずる方角に昇るロケット

「人工衛星を打ち上げるためには、東の方角に海かさもなくば海なみにだだっぴろい土地が開けた場所が必要だ」と書いていたのは「宇宙へのパスポート」シリーズの中の松浦晋也笹本祐一である。

日本の種子島も内之浦も、東側は太平洋である。アメリカのケネディ宇宙センターの東は大西洋だし、旧ソ連のバイコヌールの東側は中央アジアの大草原だ。フランスの打ち上げ基地である南米フランス領ギニアのクールーも大西洋に面している。クールーに移る前のフランスは、アルジェリアの砂漠から打ち上げていた。イギリスはかつてオーストラリアの真ん中から打ち上げていたが、いまは自力での打ち上げは行なっていない。中国は少し事情が違って、酒泉・太原・西昌と3個所ある打ち上げ施設はいずれも内陸部だ。砂漠の中の酒泉はともかく太原・西昌は人跡未踏という土地柄ではない。実際、西昌ではロケット打ち上げ失敗により現地住民に多数の犠牲者を出したこともある。これにこりたのか、南シナ海に浮かぶ海南島に人工衛星打ち上げ施設を建設しようという動きもあるらしい。2月に初めて自力で人工衛星を打ち上げたイランの打ち上げ施設はテヘラン近郊にあるが、東南の方向に打ち上げてインド洋上空に出させたようだ。
東側を敵国に囲まれたイスラエルでは、地球の自転に反するという不利をしのんで西向きの地中海方向に打ち上げている。

さて今話題の北朝鮮である。
北朝鮮の場合、東側に海はあるが開けた大洋というわけではない。日本列島がおおいかぶさるように取り巻いているのだ。人工衛星を打ち上げようとするなら、どうしても日本列島を飛び越えるしかない。
来月4日から8日の間に北朝鮮が人工衛星打ち上げを行なうと通告されている。これをNHKなどでは「人工衛星打ち上げを名目とするミサイル実験」と称しているが、三十一は北朝鮮は本気で人工衛星を打ち上げるつもりだと考えている。というか、前回(1998年)も多分本気だったはずだ。
ねんのために言っておくと、三十一は今回の打ち上げがミサイル開発とはまったく無関係だと言っているわけではない。人工衛星の打ち上げと大陸間弾道弾に求められる能力は近い。片方が成功すればもう片方もほぼ実現できたと考えてよい。どちらを先に実験するかはたいした問題ではないのだ。旧ソ連が1957年に世界で初めて人工衛星を打ち上げたとき、ペイロードであったスプートニク1号はただテレメトリを送り返すだけの無害なものだった。それでもアメリカ人はスプートニク1号に大陸間弾道弾の脅威を感じたのである。

単なるミサイル実験と人工衛星打ち上げでは技術的には大差ない。問題はそれが与える政治的影響である。自力で人工衛星を打ち上げたとなると、国内国外に対する非常に大きな宣伝材料となる。宇宙の平和利用はすべての国がもつ権利でもあるので、ミサイル実験よりも非難しづらい。前回(1998年)、人工衛星の打ち上げに成功したことに(国内的には)なっているのでそれとどう整合させるかが興味深いが。

領空について、かつては領土と領海の上空でその主権は無限におよぶと考えられていたが、現在では大気圏外の宇宙空間は領空とはみなされなくなっている。大陸間弾道弾なら最高高度は300キロ程度、人工衛星打ち上げでも少なくとも180キロは越えるはずで、立派に領空外である。領空でもないところで何をされても文句はつけにくい。そもそも、日本上空を含む世界中の各国上空を米ソ(露)の軍事衛星が我が物顔に飛び回っている現状で北朝鮮だけに目くじら立てるのはダブスタと言われても仕方ない。

誤解しないでほしいのだが、三十一はけして北朝鮮を擁護しているわけではない。ただ連中のやり方が巧妙であるということを指摘しているのだ。日本のマスコミや世論は感情的に騒いでいるが、その批判は簡単に反論されてしまう程度のものでほとんど意味がない。もっと別の戦術を考えるべきではなかろうか。

自衛隊に破壊措置命令が出たということだが、設置国の管理を離れた地雷や機雷の撤去破壊活動や、表向き国籍不明の不審船の阻止のための海上警備行動などとはまたひとつ次元の違う、当事国が所有権をもつことが明確な設備・機器を破壊することを国家の意思として行なう決断をしたというのはまたひとつ段階を越えたということだと思うのだが、知るかぎりそこを問題にしているマスコミはいないようだ。

海自のイージス艦と、空自のペトリオットPAC3が実際にロケットに備えて展開するようだが、北朝鮮のロケットが正常に動作して予定通り人工衛星を軌道に乗せる見込みなら破壊措置は発動されず、なんらかの不具合によって領土領海に飛翔体が落下する可能性が高くなったときにだけ破壊措置が実行される、というのは適当な着地点であろうと思う。

個人的には、飛翔体の落下予想地点が実際には被害の可能性がない、しかし領海ぎりぎりあたりの地点と測定されて破壊措置が発動され、イージス艦のSM3や空自のペトリオットの実弾が発射される場面を見てみたいような気がする。そうすれば「あたるわけない」と言った自民党関係者の発言が正しいものなのかどうなのか実績で判断できるだろう。

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