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2009年4月 3日 (金)

高すぎたるは及ばざるがごとし

北朝鮮による衛星うちあげを早ければ明日に控えて、テレビでも連日さかんに取り上げられている。ところがどうも変な数字が一人歩きしているような気配。

民放のニュースだったと思うのだが、北朝鮮の打ち上げを解説して第一段で高度800キロ、第二段で高度1000キロとしていた。それを聞いた瞬間に三十一が思ったのは、

それは弾道弾の飛行プロファイルで、人工衛星打ち上げの飛行プロファイルではあり得ない

というものだ。
弾道弾の開発と人工衛星の打ち上げに使われるロケットは基本的に同一の技術の成果だ。ものによっては両方に使われることもある。だがそれでも、ペイロードが弾頭かそれとも人工衛星か、送り込む先が遠く離れた地球上の特定の地点なのか大気圏外の衛星軌道なのか、で使われ方が違ってくる。

ひとことでいうと、弾道弾はペイロードの大気圏再突入が前提であるのに対し、人工衛星は少なくとも打ち上げの段階では大気圏内に戻ってきては困るのだ。

特に人工衛星の場合、死活的に必要なのは水平方向の速度である。地球表面の方向に、少なくとも7.8キロメートル/秒の速度(第一宇宙速度)が必要だ。そのためには、ロケットが持つ有限の能力を必要以上の高度獲得に浪費するわけにはいかない。
弾道弾の場合はこれと違って、第一宇宙速度を出してしまってはいけない。さもなくば地上に落ちてこなくなり、目的を達しない。弾頭に逆噴射ロケットをつければ技術的には可能だが、そんな装備は余計な荷物でしかない。そんなことをするくらいなら、人工衛星の場合よりも上向きに打ち上げて最高高度を高くとればそのぶん水平速度が小さくなって地上に落ちてくる。

人工衛星を打ち上げる際に必要となる高度は最低180キロ程度。もちろんこれより高くなることはあり得る。アメリカ最初期のバンガード衛星は重量わずか15キロ、軌道高度は1000キロを越えいまだに軌道上にある。しかし、運搬手段たるロケットの能力とペイロードである衛星の重量の組み合わせがほとんどわからない状態で軌道高度がどれくらいになるかを推測するのは無理である。言えるのはせいぜい「180キロ以上無限大以下」でしかない。

NHKの解説でも、最高高度を「数100キロ」と報じており、やはり弾道弾の飛行プロファイルを念頭においているように見受けられる。

MAX Q を越えたあとに飛行経路が水平方向に向かうのか、やや上方を向くのかを観測することで実際に衛星だったのかどうかが判断できるだろう。

追記:

今みたら松浦さんが L/D でちょっと似たようなことを書いている。

ロケットはどこまでも上へ、上へと宇宙の彼方に突き進んで行く...わけではない (松浦晋也の L/D)

松浦さんの記事をパクったわけではない証拠に、三十一も5年以上前にこんなことを書いている。

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