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2009年5月14日 (木)

知らぬが仏(過去形)

終焉間近なスペースシャトルが、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の最後のメンテナンスミッションを実施中だ。それに絡んで、打ち上げ前に掲載された記事を読んで思わず首をかしげた。

特別訓練の飛行士、命がけ修理へ (asahi.com)

なんだこの煽動的な見出しは。三十一もさすがに目をひかれてしまった。

しかし、修理は危険を伴う。宇宙空間での作業はもともと危険なうえ、ハッブルは国際宇宙ステーション(ISS)と異なる軌道を周回しているため、シャトルが安全に地球に帰還できない事態が起きても、ISSに避難して救援を待つことができない。

スペースシャトルはこれまでもISS(やミール)と無関係な軌道を飛んだことがいくらもある。そもそもスペースシャトル計画の当初の設計ではそんなこと考慮されていなかった。単独で飛んで単独で帰還できることを想定していたのである。ちゃんと数えたわけではないが、これまで100回あまりのミッションのうち半分はここでいう「危険な」軌道をとっていたと思う。それらの飛行に対して、これまでこのような危険視した報道はなされていなかったはずだがなあ。

確かに、コロンビア事故で露呈した断熱材剥離による耐熱タイル損傷というリスクは、結局いまに至るも完全に解決していない。このリスクは1981年の第一回打ち上げのときからあったのだが(当時、打ち上げ後に耐熱タイルが何枚か剥がれ落ちているのが発見されたのを三十一も記憶している)、2003年まではほとんど問題にされなかった。問題にされなかっただけで、問題はずっとあったのである。まさに知らぬが仏だ。

しかし今ではそのリスクは知れ渡ってしまった。万一のときにはISSに滞在して救援機がやってくるのを待つ、という最後のセーフティーネットが設定された。その手が使えない時には(つまり今回のようなケースだ)、あらかじめ救援用のシャトルをもう1機準備しておくことになったのだ。その事情はすでに以前にも触れたことがある
だが、いったんISSに滞在して救援機を待つのに比べて、直接救援機を待つのがどれくらいリスクが大きいだろうか。本質的にはまったくかわらない。最悪の事態というのは最初の機体でタイル剥離が発生して帰還が不可能になり、迎えに打ち上げた救難機でもやはり帰還不可能なほどのタイル剥離が発生してしまう、というケースだ。この発生確率はどちらでも同じである。

ついでに言うと、「特別訓練」というのもよくわからない。
それぞれのミッションについて特化した訓練をするのはあたりまえである。たまたま今回のミッションがHSTメンテナンスだからそれを想定した訓練をするので、違うミッションであれば違う訓練をする。どんな場合にも対応できる万能な、あるいは一般的な訓練があると考えているのかなあ。ま、共通メニューはあってもいいよ。でもミッションはひとつとして同じではないのだ。そういう意味では、ミッションを控えた宇宙飛行士はみな「特別訓練」を受けていることになる。

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