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2009年12月23日 (水)

お客様はカミサマです

防衛省「支払い義務ない」 ヘリ発注中止、富士重に回答 (asahi.com)
富士重、防衛省提訴へ ヘリ発注中止をめぐり (asahi.com)

陸上自衛隊の各方面隊に1個ずつ、合計5個の対戦車ヘリコプター隊に配備されている現有のAH-1Sを置き換える目的で60機あまりを調達する予定だったAHー64Dだが、生産元のボーイングでの生産中止もあって10機で調達が中止されたことはすでに記事にした

日本側でライセンス生産を担当する富士重工は、ボーイングに支払ったライセンス料を60機それぞれに分割してコスト回収するはずだったのが、肝心のAH-64Dが10機しか売れなかったために回収の目処が立たなくなってしまった。買い手の防衛省のほうでは、「60機分の契約をしたわけではなく、契約は単年度ごとにするものだから支払う義務はない」としているという。
普通の商取引でいうなら、それは確かにその通りだ。投資は売り手側の判断でするものであり、目論見よりも製品が売れなかったからと言って買い手に売り上げを保証しろというのは理屈にあわない。
しかしそれも普通の売り手、普通の買い手、普通の製品の場合の話。武器輸出禁止を国是とする日本では、AH-64Dを買ってくれるお客様は国(防衛省)しかない。ほかの製品であれば別の販路を開拓するなどの企業努力もやりようがあるが、富士重にしてみれば国が買ってくれなければお手上げなのである。現有のAH-1S置き換え目的で所要数60、という見込みには十分な蓋然性があるし、これまでこんな半端な形で調達をやめた前例はなかった。

仮に今回、国が「個々の契約」という立場を押し通すなら、企業側もそれに応じた対応を迫られることになるだろう。つまり、いつ調達を打ち切られるかわからない製品の投資コストはできるだけ早く回収しようという意識が働くことは充分考えられる。もともと調達初年度の単価は高くなりがちなものだが、これからはますます初年度単価が高騰し、そのために初年度調達数が少なくおさえられ、結果としてさらに初年度単価が高騰するという悪循環に陥る、というシナリオは杞憂だろうか。万一これが杞憂でなかったとしたら、継続的安定的な防衛装備の調達は困難になりかねない。

このままでは防衛省自身が防衛産業を破壊しかねない。さもなきゃ、武器輸出を解禁して販路拡大を許容するかだ。米ロ中あたりは別として、ヨーロッパで戦闘機などの高価な装備の共同開発が進んでいるのは、調達数を確保して開発コストを価格に薄く広く反映させることにひとつの主眼がある。いっぽうで、例えばブラジルあたりの中進工業国で軽練習機の開発が盛んに行われているのは、最初から輸出してコスト回収することを見込んでいる。日本の防衛産業は究極的には顧客が1社だけで、しかもマーケットの拡大はあり得ないという資本主義経済とはまったく違うメカニズムで動いている。納税者としては何か考えなくちゃいけない時期に来ているのではなかろうか。

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