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2010年6月 3日 (木)

「未知の翼」


ずいぶん前から自室の片隅に転がっていた覚えはあるのだが、部屋を片づけていたときにたまたま手にとってそのまま読み始めた本。
読み終えて奥付を見て驚いた。2002年ですか。

この本でとりあげられているのは、旧陸軍航空審査部。メーカーが試作した新型機を実際に飛ばして審査する部署で、官制上は「官衙」、つまりお役所であって実働部隊ではない。しかしその任務上、まだ実績のないいわば未完成の機体を操って飛ばし、飛ばすだけでなく審査し場合によっては改善を指示しなければいけない。経験豊富で腕が立ち冷静沈着なパイロットでなければ勤まらないのは当然だ。こうして審査部が置かれた福生飛行場(現在の米軍横田基地)には陸軍を代表する錚々たるパイロットが集まった。

これらのパイロットがテストした機体はキ43一式戦(いわゆる「隼」)からキ100五式戦、そのほかさまざまな試作に終わった機体、さらにはドイツから入手したFw190、はては捕獲した米P40からP51まで。機種を問わずすべての機体は必ずこの審査部でテストされたが、戦況を反映して戦闘機の占める比率が非常に高かった。自ずから腕っこきの戦闘機パイロットが集まることになる。

しかし何分未完成の機体である。事故による殉職はあとを経たない。さらに戦争末期本土が米軍機の空襲を受けることになると、優秀なパイロットを多く擁し最新の機材を保有する審査部は当然のように防空戦にかり出されることになる。いかに優秀なパイロット、優秀な機材であっても苛烈な戦闘による消耗は避けられない。機体や兵器のみならず、こうしたパイロットや、パイロット以外の整備隊員などこそがこの物語の主人公だ。

三十一はもともと海軍からこの道に入ったので、やはり陸軍よりも海軍のほうに親近感をもつ。だが最近は、陸軍航空も海軍航空にけしてひけをとらなかったと思うようになっている。この本を読んでますますその意を強くした。

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