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2010年8月 4日 (水)

「日本の歴史22 政党政治と天皇」


この巻の担当は大正政変から5・15事件まで。言い換えると、政党が政権担任勢力として無視できない存在であった期間だ。
もうひとつ、著者がこの時期のキーとして考えているのが「天皇」である。

いまさら言うまでもないことだが、明治憲法体制ではすべての権力が天皇に帰結している。政府と軍と議会と司法が別個に天皇に直属し、それぞれの機関のあいだを調整する機能は天皇だけが持っている。しかし現実には天皇はこの機能を積極的には行使してこなかった。政治的に責任を負わない天皇が積極的に政治に関与した場合その結果に対して責任を負う者がいないことになってしまう。結局は責任を負うべき立場にある輔弼者たち(政府や軍部)が決定した政策に従う以外に選択肢がないのだ。
しかし天皇はしばしば政策決定過程において「意見表明」という形で介入した。それが頂点に達したのが有名な「田中義一退陣」劇であった。その反動か、ロンドン条約問題に際しては天皇側近である牧野内大臣や鈴木侍従長が政治的に立ち回って天皇が決断を迫られる状況に陥ることを回避した。こうした動きが「公正な調停者」であるべき天皇のイメージを悪くし、結果としてそれ以降の天皇は「調停者」たることを失い、単に状勢の傍観者になってしまった、と著者は述べている。

個人的には、それは少し因果関係を強く考えすぎではないかと思う。近年の歴史叙述では因果関係を必要以上に強くとらえない立場が主流になっている(と思う)。過度な因果関係の強調は陰謀史観に結びつきやすい。

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