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2010年12月28日 (火)

「武装親衛隊」


実はけっこう前に読み終えた本だが、しばらく感想書きをさぼっていたのだ。

よく考えたら「武装親衛隊」という名称は奇妙なもので、三十一は武装していない親衛隊なるものの存在を知らない。そもそも「親衛隊」は特定の組織を指すものではなく、どこの国に存在しても不思議でない一般名詞なのだが、ミリタリーな文脈ではもっぱらナチスドイツの「Schutzstaffel - SS」を意味する。よく知られているように、1920年代にナチ党の実力組織であった突撃隊(Strumabteilung - SA)が、党首ヒトラーの統制を離れようとしていたのに対して、ヒトラー個人に忠誠を誓う護衛隊として設立されたのが親衛隊であるから、本来はSPのようなもので任務としてはむしろ警察に近かった。しかしこの護衛隊は組織構造として軍隊と同様の構造を採用した。この護衛隊を中核として、あたかも軍隊とみまがう「武装親衛隊 Waffen-SS」が誕生した。

こういう組織の存在は、もともと国家の唯一の武装力であるはずの国防軍の警戒心を刺激しないわけにはいかない。プロイセン陸軍の伝統を色濃く残すドイツ国防軍首脳は、さすがのヒトラーであっても意のままにできない存在だった。結局ヒトラーは、国防軍をはばかってヒムラーが求めるSSの勢力拡大を抑え、戦場においては国防軍の指揮下に置くこととした。だが、ポーランド戦やフランス戦で「ヒトラーに対する絶対的な忠誠」「損害を顧みない勇猛果敢さ」「既存の軍隊の論理にとらわれない行動」で大きな戦果を挙げ、その実績を背景に急速に拡大を始めた。ロシア戦以降、それまで装備面で国防軍の後塵を拝していたSSに対して最新装備が優先して供給されるようになり、精鋭部隊として待遇されるようになった。そのいっぽうで、既存の軍隊がもっていた軍人間の倫理に無頓着なSSは残虐行為を敢えてする部隊として敵味方双方から恐れられ非難された。

戦局が悪化するにつれてヒトラーは自らに忠誠を誓うSSに依存するようになった。特に1944年7月の暗殺未遂事件以降、ヒトラーは国防軍をまったく信用しなくなっており、これまでとは逆に国防軍部隊をSSの指揮下に置くようなことも起きた。しかし本来、親衛隊はあくまでナチ党の組織であって国家の組織ではなかった。明らかな国の組織である国防軍が党の指揮下に入ったことになる。もはや末期症状と言っていいだろう。

さて本の感想だが、内容は盛りだくさんで読み応えはあったが、構成が散漫で読み物としては読みづらい。とはいえ、事典のような使い方をするにしても、特定の項目に簡単にアクセスできるようになっていない。悪い本ではないのだが、最善というわけでもない、といったところか。

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