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2011年11月24日 (木)

「冷たい方程式」


新装版ではなく、新編集版ということで、旧作のうち二編だけを残して他は入れ替わっている。残ったのは表題作「冷たい方程式」と、アシモフの「信念」。

表題作は、発表後 50 年以上経ちながらいまだに新鮮な傑作。文庫で50ページにも満たない長さで、三十一はこれまで何度読み返したか数え切れないが、そのほとんどは実は書店での立ち読みで済ませたという罠。最終的には旧作も買ったのだが、結局この表題作しか読んでいない。コンパクトにまとまっているだけに、何を話してもネタバレになってしまうので説明が難しい。そこでここでももう一度言うことにしよう。

まあとにかく読んでみてください。

表題作を含めて収録されているのは全部で9本だが、どれも例外なく面白かった。はじめのうち少し読みづらく感じるものもなくはなかったが読み進めるうちにどんどん先を読みたくなってくるという現象をこの一冊のなかだけで何度も経験した。「冷たい方程式」と「信念」は別格として、そのほかに強いて特に気に入ったのを挙げるとすると、シェクリイの「徘徊許可証」であろう。いかにもシェクリイらしい皮肉の効いた作品だ。また、厳密に SF とは言い難いが「みにくい妹」も面白かった。わずか14ページ、しかけがわかるまでは何ということのないただの愚痴のように思えるのだが、しかけがわかった瞬間に目からウロコが落ちた。

Amazon の書評は旧版も新版も共通らしく、投稿済みのコメントはその大半が旧版むけのものだ。それによると、旧版にはシェクリイの別の短編が収録されていたらしい。家の中のどこかにはあるはずなので、探してみようかな。きっと無理だなあ、このカオスの中から発掘するのは。

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2011年11月21日 (月)

神の子テボウ

今年もほぼ3分の2が終わった。

今年は勝てない、勝たなくていいと言い続けてきたわがデンバーだが、気がついたら5勝5敗、地区2位まで上がってきている。1位のオークランドとの勝ち星の差はわずかにひとつ。
QBがオートンからテボウに替わって4試合の成績は3勝1敗で、これだけ見るとテボウのおかげで勝てているようにも見えるが、数字を見るとテボウの QB としての成績はとても誉められたものではない。それだけ見ると負け試合の数字のように思えるくらいだ。

もっとも、QB の役割は数字だけでははかれないのも確かだ。いい QB というのは「試合に勝たせる QB」と言われているとおり、どんな形であっても勝たせる QB が求められる。そういう意味ではテボウはいい QB なのかもしれない。いずれにせよその評価は現物を見るまで保留したい。今週デンバーはニューヨークジェッツに勝ったようだが、その試合が明後日に放送されるので実際の動きをじっくり見られるものと期待している。

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2011年11月17日 (木)

「幼年期の終わり」



ここ数日、電子レンジがときどき異音をあげるようになり、今朝も食事の準備をしようと冷凍のチャーハンを放り込んで作動させたところ大きな音を立て始めた。どうもモーターが震動して筐体と共鳴しているらしかったので、少しでも抑えようと手で側面の外板にさわったまさにその瞬間、ぶっつりとスイッチが切れてそれっきりうんともすんとも言わなくなった。
しょうがないのでまだ冷たい冷凍のチャーハンを別の容器に入れ換えて冷凍庫にしまい、朝食には切り餅をオーブントースターで焼いた。今週末にでも買い換えに行かなくちゃ。

電子レンジの話が表題の本とどういう関係があるのかと言えば、実はまったく関係がない。ただ言わずにいられなかっただけです。

さて本題。
これはもう、SF者には説明の必要もない古典中の古典。SFを読まない人にもクラークの名前は轟いているだろうが、そのクラークの出世作だ。むしろ今まで読んでいなかったというほうが不思議。実は、これまでもプロローグだけは立ち読みで何度も読んでいた。文庫にしてわずか8ページのこのプロローグの末尾の1行、「人類はもはや孤独ではないのだ。」を初めて読んだときの「そう来たか」という感覚は未だに新鮮に思い出される。要するに、プロローグだけ読んだところでおなか一杯になっちゃったのかな。

人類よりはるかに進んだ文明をもった知的生命体(オーバーロード)との邂逅、そしてオーバーロードによる統治。これだけでもSFとしてのプロットは充分成立している。単にSFにとどまらない、SFの形を借りた文明論を展開するのも可能だろう。おおかたの読者ははじめのうちそのような展開を想定していたに違いない。三十一もそうだった。しかしクラークの目はさらにその先を行く。ネタバレになるので詳しくは述べないが、オーバーロードの助けを得て人類は究極の進化を遂げる。のちの「2001年」につながる発想がここにはすでにある。

そう、「のちの」と述べた通り、「幼年期」は「2001年」に先行する。いまでも充分衝撃的なこの作品が公開されたのは1953年、スターリンが死んで朝鮮戦争が休戦になった年だ。このころはまだ、もっとも楽天的な人間でも人類の宇宙進出はずっと遠い未来と考えていたに違いない。当のクラーク自身もこの作品のプロローグの中で人類が初の宇宙飛行に挑もうとしていた時代を「1945年から30年以上経った」時期に置いている。その時代にこれだけ内容の濃いSFを書けるのは驚きというほかない。改めてクラークという存在の意味を思い知らされた。

ところで、Amazon の書影は古いものである。三十一が買った新装版の表紙はこれとは違うイラストになっているが、Amazon には新しい書影がみつからなかったのでやむを得なかった。手元にある新装版は「2010年7月15日 34刷」とあるので、少なくとも一年以上前には変わっているはずだけどねえ。

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2011年11月11日 (金)

「第一次世界大戦(下)」


上巻の感想を投稿したのはなんと6月。読み終えるまでに半年近くかかったわけではなく、実はとっくの昔に読み終えていたのだが、今さらになって感想を書こうと思ったのは今日の日付による。

一月一日は元旦、三月三日は桃の節句、五月五日は端午の節句、七月七日は七夕、九月九日は重陽の節句、さてでは十一月十一日は?

答えは第一次世界大戦の休戦記念日。

戦間期のドイツでは、ドイツが降伏したのはけして戦闘で敗れたのではなく「背後から刺された」、つまり共産主義者の策動により戦争を継続できなかったせいだ、という「神話」がまかり通っていた。この神話を流布したひとりがヒトラーで、その風説を利用して権力の座にのし上がったのだ。

しかし実際には、ドイツが降伏に追い込まれた1918年秋、これまで4年間にわたってドイツ人とフランス人とイギリス人と、そして新たにアメリカ人の血を飲み込み続けていた西部戦線はすでに突破されていた。
実はこの時期、どんなに堅固な塹壕陣地であっても突破は必ずしも不可能事ではなくなってきていた。ただ、ひとたび戦線にあけた穴を維持し拡大するには、その穴を塞ごうとする敵の膨大な予備部隊に先んじる速度と、つねに穴をあけつづけるだけの攻撃力を維持する必要があったのだ。1917年まではその能力はどの国の軍隊にもなかった。しかし1918年には事情が変わっていた。連合軍はその夏季攻勢で戦車を大量に投入し、突破口の拡大をはかった。ドイツ軍は予備部隊をつぎ込んでどうにかこの攻勢を防いだ。しかし、予備兵力を使い果たしたドイツ軍には、つづく秋期攻勢を支えるだけの力が残っていなかった。随所で戦線を突破されたドイツ軍は休戦までにフランス国内の占領地をほとんど失うことになる。

予備兵力のない軍隊に勝利はない。それは三十一の確信であり、軍事上の常識でもある。行き着くところまでリストラを進めた企業は「予備兵力のない軍隊」と何が違うだろうか。

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2011年11月 9日 (水)

「たったひとつの冴えたやりかた」


最近の SFマガジンで「海外SFスタンダード100」という特集をやっていた。これは意図的に比較的最近の作品を選んでいるそうで、戦前の例えばハミルトンなどは含まれていない。
このリストをつらつらと眺めていてあまりにも読んでいない本が多いことに気づいたので、これから少し意識してスタンダードを読んでみようと思っている。三十一の好みもあるので、かたっぱしから全部読んでみるということにはならないと思うが。

というわけで最初に選ばれたのが本作だ。実は前々から気になっていて読む機会をうかがっていた。ちょうどいいきっかけになったわけだ。同じテーマ・世界観の中で異なる時期・舞台の中編3本からなる。全体を通したテーマは「異文化遭遇」つまりファーストコンタクトものである。個人的に面白いと思ったのは、正面から文化の違いをとりあげた3本目。「読み終わる前にハンカチがほしくならなかったら、あなたは人間ではない」と評された表題作の1本目については、三十一は「冷たい方程式」を思い出してそれほど衝撃的ではなかった。

なんと、今調べてみたところ「冷たい方程式」が新装版で再刊されるらしい。これは買ってしまうかもしれないなあ。

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2011年11月 1日 (火)

2011年10月の打ち上げ

今月は9件。

10/2 20:15:14GMT Plesetsk, Soyuz2.1b/Fregat (Cosmos 2474 GLONASS-M)
10/5 21:00:02GMT Baikonur, Zenit 3SLB (Intelsat 18)
10/7 8:21:04GMT 西昌, 長征3B (Eutelsat W3C)
10/12 5:31GMT Sriharikota, PSLV (Megha-Tropiques, Jugnu, VesselSat-1, SRMSat)
10/19 18:48:57GMT Baikonur, Proton M/Briz-M (ViaSat-1)
10/21 10:30:26GMT Kourou, Soyuz2.1b/Fregat (Galileo IOV-1 PFM, Galileo IOV-1 FM2)
10/28 9:48:01GMT Vandenberg, Delta 7000 (NPP, E1P-U2, AubieSat-1, M-Cubed, RAX-2, DICE-1, DICE-2)
10/30 10:11:12GMT Baikonur, Soyuz U (Progress M-13M)
10/31 21:48:10GMT 酒泉, 長征2F (神舟8)

Orbital Launch Chronology

今月の世間的な注目は "神舟8" であろう。ひさしぶりに無人で打ち上げられた神舟だが、"天宮"実験室とランデブー・ドッキング実験を行なうことになっており、自前の宇宙ステーション建設のための予行とみられている。

さて、三十一的な注目は 10/21 の Galileo 打ち上げである。Galileo は欧州版 GPS とも言えるもので、ロシアの GLONASS, 中国の北斗とならんで自前の測位システムを構築しようとする試みのひとつだが、当初計画よりもかなり遅れがでているとされている。しかし注目すべきは Galileo というペイロードではなく、その運搬手段である。かねてから予定されていた ESA (ヨーロッパ宇宙機関) による ソユーズ・ロケットを使ったギニア宇宙センターからの打ち上げだ。
これまで北緯45度のバイコヌールや、北緯62度のプレセツクからの打ち上げに用いられてきたソユーズ・ロケットだが、南緯5度、ほぼ赤道直下と言ってよいギニア宇宙センターからも打ち上げられるようになった。高緯度のバイコヌールやプレセツクからと比べて、ギニアからならGTO(静止トランスファー軌道)投入能力を大幅に向上させることができる。
またヨーロッパからしてみれば、これまで使用してきた GTO 10トン級、大型のアリアン5に加えて、LEO 7トン、おそらく GTO 2トン程度の中規模打ち上げ能力をもったソユーズをラインナップに加えることができた。より小回りのきく打ち上げに充当されるだろう。今後、イタリアが主体となって開発している比較的小型のヴェガ・ロケット (LEO 2トン級くらいかな) がモノになれば、小型から大型までカバーできるだけの選択肢が出揃うことになる。
「お客様の要望に応える豊富なラインナップ」というわけだ。

某国の宇宙機関はもう何年も前から「商業打ち上げ参入」を歌い上げているが、こういうライバル(むこうはライバルと思ってくれていないかもしれないが)に対抗していかなきゃいけないんですよ、わかってる?

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