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2012年6月 9日 (土)

「英国軍艦勇者列伝」


「世界の駄っ作機」というシリーズをModel Graphix 誌上に連載している"岡部ださく"と似た名前の著者が Navy Yard 誌上に連載していた記事をまとめたもの。
この本の最初のほうで「イギリスの軍艦に目覚めた子供のころ(たまにそういうのに目が覚めちゃう子供っているんだぞ、後の人生が大変だけど)」というセリフがあるけれど、三十一も子供のころではなかったがイギリスの軍艦に目覚めてしまってその結果いままさに人生が大変なことになっている。

三十一もご多分に漏れずとっかかりは第二次大戦の日本海軍の軍艦から興味をもったわけだが、そこからの関心の広がり方が普通の人とちょっと違ったようで、どんどん時間軸をさかのぼって技術的な発達史のほうに興味をもつようになった。そうなるとどうしても避けて通れないのが英国海軍である。戦艦も巡洋戦艦も空母も軽巡洋艦も駆逐艦もイギリスで生まれて育ったと言っていいだろう。日本海軍の初期の軍艦はその大半が海外からの輸入であったが、そのさらに大半はイギリス製だった。明治から大正はじめくらいまでの日本の軍艦の発達史は、イギリス海軍の軍艦発達史を知らずには語ることはできない。こうして始まった三十一のイギリス軍艦への関心だが、やがて日本の軍艦とは無関係にイギリス軍艦そのものに興味が出てきた。

岡部氏は第二次大戦のイギリス軍艦を中心に記述していて、特にトライバル級駆逐艦への愛が文章のそちこちから伝わってくるのだが、実は三十一はトライバル級よりもひとまわり小型の標準型艦隊駆逐艦である J/K 級あたりのほうが好みなのである。さらに言うと、三十一は第二次大戦よりもう少し古い時代のフネに興味がある。この本の最後の章では唯一第一次大戦当時の巡洋戦艦タイガーを取り上げているが、タイガーはジュットランド以前の超弩級巡洋戦艦のひとつの到達点で、その系譜をひもとくとライオン級→金剛級→タイガー級という流れになる。イギリスの巡洋戦艦の発達を知らなくてはなぜ金剛級がああいう基本配置になったががわからないし、ライオン級とタイガー級の設計変更の間には日本から受注した金剛級で採用された新らしい配置が成功をみたという事情がある。

兵器、特に軍艦という兵器は他国との相対的な比較において意味を持つ。世界の中でどの位置にあるかということを意識しなくてはいけない。他国の動向を無視して「当社比」の改善に満足しているわけにはいかないのだ。ある時期まで、世界において軍艦の優劣を測る物差しは間違いなく英国であった。日本のような国であれば、他国の動向を見て追随していくという方法もとれるだろうが、最強の海軍国であることを宿命づけられた英国には、他国のあとを追う立場になることは許されなかった。質量両面でつねに世界の先頭に立つことを求められた結果、特に19世紀後半の技術変革期にはさまざまな形式の軍艦が建造されその多くはやがて消えていった。しかしこれも最強の海軍国であり続けるための必須の投資であったろう。
まるで突然変異と適者生存の原理に従う進化の営みを見ているようだ。そういえばダーウィンはイギリス人だったね。この軍艦の発達を見て進化論を思いついた・・・というわけではないだろうけど。

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コメント

岡部いさく(本名)=岡部ださく氏ですよー。
漫画家の岡部冬彦氏(故人)のご子息です。

投稿: 通りすがり | 2012年6月28日 (木) 18時09分

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