「天地明察」
映画製作にあわせて文庫化されたらしい。沖方丁と言えば三十一にとっては「マルドゥク・スクランブル」だが世間的には直木賞候補作家なのかな。
中国からの輸入ではなく日本独自の暦を初めて採用した貞享暦を制定した渋川春海を主人公とする。暦と数学と江戸時代という三十一の好みにかなりストライクな題材だった。
和算で有名な関孝和に春海が出した問題がはじめの重要なアイテムになっているが、三十一が見てさえこの問題に解答がないことはわかる。平面上に与えられた点が2つだけのとき、この二点を通る円は無限に存在するというのは比較的初歩の幾何である。円をひとつに決めるためには直線上にない少なくとも3つの点が必要なのだ。三十一がこうして一瞬でこの問題が「解不能」であることがわかるのは、先人がこうした問題を四苦八苦しながら解いてきてくれたからなんだろうなあ。先達はあらまほしきかな。
春海がちょっと情けなく描写されているけど、その分ヒロインの"えん"が引き立つのかな。映画では宮崎あおいが演じてるのかな。
ひとつ指摘。「従三位下」という位階が登場するけれど、三位以上の位には上下はつかない。「従三位」とすべきであっただろう。すぐあとに出てくる「正四位下」にひきずられたのかな。
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