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2012年8月26日 (日)

「彷徨える艦隊」


最近のミリタリーSFとしてはかなり評判が高い作品ではあったのだが、カバーイラストがサイバーパンクっぽかったので二の足を踏んでいた。実際に読み始めると一気に読み進めてしまった。現時点で7巻まで出ているが、二週間くらいで全部読んでしまいました。

「銀河英雄伝説」を楽しく読める人にはいいのかもしれない。でも実は微妙にテイストが違っている。銀河英雄伝説のほうには、独裁制にせよ民主制にせよ政治体制というものに対する不信感というか懐疑があるが、本作ではその運用はともかくとして民主制の理念そのものには疑問を持っていないように見えて、いかにもアメリカっぽい。キリスト教をそのまんまもってくることはさすがに避けて先祖崇拝という違った形を持ってきてはいるものの、全人類にとって普遍的な宗教をひとつ設定したというところもアメリカンだと思った。

ただ純粋にSFとして考えたときに、艦隊戦の描写は銀英伝よりリアリティが高い。光速度による情報伝達速度の限界と、相対論による情報の不確実性が戦術に大きな影響を及ぼしている。これは銀英伝ではほぼ完全に無視されていた要素だ。それだけ銀英伝のほうはとっつきやすくなっているので、どちらがよいという話ではない。どちらがよりSFかといえば、少なくとも艦隊戦に関していえば「彷徨える」のほうに軍配が上がるというだけのことだ。

もっとも、本作のキモは実はこうした描写よりも主人公であるギアリー大佐がある意味「タイムスリップ」してきた人間だという点にある。イフ戦記でありがちなのは未来から過去にタイムスリップして歴史上の知識をもとに戦勢をひっくり返すというものだが、過去から未来へのタイムスリップで果たして効果があるんだろうかという向きもあるかもしれない。けど三十一は意外にあるんじゃないかなという気がする。変なしがらみがなくなればそれだけで結構違った行動ができんじゃないのかなあ。

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