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2012年11月15日 (木)

予想屋だったら失業

外した外した

まさかこんなに外れるとは。何人か当たった顔ぶれもあるが、気分としては正解ゼロみたいな感覚だ。

実際の顔ぶれを見ての印象は、「"団派"の完敗、"上海幇"の躍進」である。

まず顔ぶれを見てみよう。
1. 習近平 1953年生 59歳 国家副主席 (新・総書記 中央軍委主席、次期国家主席)
2. 李克強 1955年生 57歳 国務院筆頭副総理 (次期総理)
3. 張徳江 1946年生 66歳 国務院副総理・重慶市党書記
4. 兪正声 1945年生 67歳 上海市党書記
5. 劉雲山 1947年生 65歳 党中央宣伝部長 (新・中央書記処筆頭書記)
6. 王岐山 1948年生 64歳 国務院副総理 (新・中央紀律検査委員会書記)
7. 張高麗 1946年生 66歳 天津市党書記

驚いたのは、李源潮 (1950年生 62歳 中央組織部長)、汪洋 (1955年生 57歳 広東省党書記)、劉延東 (女性 1945年生 67歳 国務院国務委員) といった共産主義青年団出身者 ("団派") がまったく昇進しなかったこと。前総書記の胡錦濤と、次期総理の李克強はいずれも共産主義青年団(共青団)出身で、長く共青団第一書記を務めた胡耀邦の系譜につながる。若いうちから共産主義をたたきこまれた共青団出身者はエリート候補生で、少なくともひとりかふたりは昇進するものだと予想していただけにまったく意外だった。
王岐山はもともと経済畑ではっきりした色はついていないが、それ以外の昇進者4人(張徳江、兪正声、劉雲山、張高麗)はいずれも江沢民に近いとされており、本院(江沢民)が新院(胡錦濤)を圧倒した形になった。多少の軽重は見られるにしても、胡錦濤系の"団派"、江沢民系の"上海幇"、習近平に代表される"太子党"のバランスを考慮した組み合わせになると思っていたのだが、ここまではっきり勝敗が出てしまうとはさすがに考えていなかった。表向きにはなっていないけれど、胡錦濤路線が内部では否定的に評価されたのかもしれない。近年明らかになってきた矛盾は、江沢民時代も含めた改革開放時期の間に蓄積したものだが、胡錦濤がその責任を負わされる形になったのだろう。

もともと、1992年に50歳だった胡錦濤を抜擢して政治局常務委員入りさせ、江沢民の後継に位置づけたのは江沢民自身ではなく鄧小平だった。胡錦濤と江沢民の関係がそれほど悪かったとも思えないが、押しつけられた後継者である胡錦濤に対して江沢民が複雑な感情を抱いたとしても不思議はない。

さて新しく中国の指導部になった7人の役割分担を考えてみる。
習近平は党と軍のトップに正式に就任した。李克強は、来年春の温家宝総理退任の後を襲って政府のトップになることが確定している。常務委員の名簿順はそのまま序列順で、第三位と第四位にあげられている張徳江と兪正声がそれぞれ全国人民代表大会常務委員会委員長(国会議長)と、全国政治協商会議主席(イメージとしては参議院議長に近い)に就任することになるだろう。劉雲山は中央書記処書記の序列第一位であり党の日常工作を担当する。王岐山は上記の通りもともと経済畑出身なので党務よりは政務が向いているだろうから引き続き国務院副総理か。張高麗は党中央紀律検査委員会の代表である書記に選出された(11/21訂正:中紀検委書記は王岐山でした)。思想指導の要であるイデオロギー担当は劉雲山か張高麗の兼任ということになるのかな(張高麗がイデオロギー担当か)。

中国共産党では、事実上 68歳が定年とされているので、習近平と李克強を除く昇進組は全員一期(5年)しかつとめられない。5年後の19期大会では、トップふたりを残して残りのメンバーはまたも全員入れ替わりとなる。胡錦濤は「世代交代が達成された」と大会を総括したそうだが、実際の顔ぶれを見ると年齢順送りの印象が強く、世代交代が大きく進んだとは言い難い。

常務委員を含めた中央政治局委員は25名。この名簿は画数順で機械的に並べたものでこの中には序列はない。+ 印は昇進組である。
- 習近平 (常務委員)
+ 馬凱   1946年生 66歳 国務院秘書長
- 王岐山 (常務委員)
+ 王濾寧 1955年生 57歳 前・中央書記処書記
- 劉雲山 (常務委員)
- 劉延東 1945年生 62歳 女性、国務院国務委員
+ 劉奇葆 1953年生 59歳 四川省党書記
+ 許其亮 1950年生 62歳 人民解放軍上将、空軍司令官、中央軍委副主席
+ 孫春蘭 1950年生 62歳 女性、福建省党書記
+ 孫政才 1963年生 49歳 吉林省党書記
- 李克強 (常務委員)
+ 李建国 1946年生 66歳 全人大秘書長
- 李源潮 1950年生 62歳 党中央組織部長
- 汪洋   1955年生 57歳 広東省党書記
+ 張春賢 1953年生 59歳 新彊ウイグル自治区党書記
- 張高麗 (常務委員)
- 張徳江 (常務委員)
+ 范長竜 1947年生 65歳 人民解放軍上将、済南軍区司令官、中央軍委副主席
+ 孟建柱 1947年生 65歳 国務院公安部長
+ 趙楽際 1957年生 55歳 陜西省党書記
+ 胡春華 1963年生 49歳 内モンゴル自治区党書記
- 兪正声 (常務委員)
+ 栗戦書 1950年生 62歳 貴州省党書記
+ 郭金竜 1947年生 65歳 北京市長
+ 韓正   1954年生 58歳 上海市長

1960年代生まれの胡春華、孫政才は、習近平らに続く第六世代の指導者候補として考えられている。趙楽際、韓正あたりは李源潮や汪洋に並ぶ次期19期での常務委員候補になるだろう。
前の記事で常務委員候補に挙げた令計画は、中央委員には残ったが中央書記処からは名前が落ち、中央政治局には入れなかった。9月に党中央統一戦線部長に就任しているから失脚したというわけではないだろうけど、一歩出遅れた感はある。

もうひとつの注目人事は中央軍事委員会だ。江沢民が党の総書記に就任してからもしばらくの間、鄧小平は中央軍事委員会主席の地位を手放さなかった。江沢民から胡錦濤への代替わりに際しても、中央軍委主席を譲ったのは総書記交代からおよそ2年後のことだった。今回も、胡錦濤が中央軍事委員会主席に残る可能性が考えられたが、胡錦濤は総書記とあわせて中央軍事委員会主席も習近平に譲った。自らの院政を否定することで、江沢民による院政を抑えようとしたのかもしれない。副主席には軍人の許其亮と范長竜が任命された。彼らはそれぞれ空軍司令官、済南軍区司令官という指揮官職にあるが、そう遠くないうちに指揮官職を譲って軍事委員会に専念することになるだろう。ヒラの軍事委員会委員の名前はまだ出てきていないが、おそらく8名で国防部長、総参謀長、総政治部主任、総後勤部部長、総装備部部長、海軍司令官、空軍司令官、第二砲兵司令官(戦略ミサイル部隊)を兼ねるはずだ。逆に言えば、委員の顔ぶれから近い将来これらのポストにつくであろう面々が予測できることになる。

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