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2012年12月21日 (金)

「女王陛下のユリシーズ号」


まず、これだけは言っておかねばなるまい。
邦題は誤訳。原題は H.M.S. Ulysses だが、H.M.S. は Her Majesty's Ship の略で、直訳すると「女王陛下の船」だが「英国軍艦」を意味する・・・・現在ならね。
この物語の舞台は第二次世界大戦中の北大西洋だが、当時英国の君主はジョージ6世。「女王」なんかいないよ。後の女王エリザベスはこの当時まだ「王女」だった。英国英語 King's English を女王在位中は Queen's English と呼ぶように、あるいは英国国歌 God Save the King を女王在位中は God Save the Queen と歌うように、英国軍艦に冠されるのは国王在位中は His Majesty's Ship であるのに対し女王在位中は Her Majesty's Ship なのである。どちらも略してしまえば H.M.S. だが。つまり、正確に訳すなら「英国軍艦ユリシーズ号」であるべきだろう。百歩譲って「国王陛下のユリシーズ号」ならまだ許せるが、「女王陛下」はどう考えても間違いだ。
海洋戦争小説の最高傑作のひとつと言われる本作だが、どうしても手が伸びなかったのはこの誤訳がひっかかっていたからだ。最近、書店で平積みになっているのをみかけて「試しに」と思ってついに買ってしまった。

FR77 船団も、英国軍艦ユリシーズも、いずれも架空の設定ではあるが、架空の設定であるからこそ援ソ船団護衛の実態を、最も凝縮された形で描写することができるのだろう。ほとんど救いのない結末がいかにもイギリスらしい。読み終わって、確かにこれは傑作だと思った。だからこそあの邦題が本当に惜しい。

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