« 2013年9月の打ち上げ | トップページ | ひとりはみんなのために »

2013年10月 8日 (火)

防衛力の"増量"反対


もうそろそろ先月号になってしまうけれど、一番最近の「軍事研究」誌で自衛隊再編について提言が掲載されていた。分不相応な名ばかりの師団-連隊編成をやめて、身の丈に合った旅団-大隊編成に作り直せというのがその主張のひとつだ。基本的には同感である。ここから下は、その提言を参考に三十一が考えたことである。

15万人の総兵力で15個の戦略単位(9個師団、6個旅団)をまかなおうというのがそもそも無理がある。実態のある師団編成を維持しようというなら、5個師団くらいが適正規模だろう。これだと、1個師団が約2万人、3個連隊編成として1個連隊が5000人前後となって世界標準に近くなる。
ところが、現在の陸上自衛隊では全国を5個地方隊に区分してその下に2~4個の師団または旅団を配置している。実際、現在の戦略単位数は国土をまんべんなくカバーするという要求から導かれたもので、その部隊数に限られた兵力を配分した結果が現在の薄く広い配置になってしまっている。この問題の根本原因は、戦略単位を「師団」にしたことから生じている。つまり、陸上自衛隊として有効な国土防衛を果たそうとするなら、師団編成を基本にするのはもう無理なのだ。

そこで師団を解体し、かわりに各種支援職種を指揮下に包含して独立して作戦を遂行できる、それでいて戦略機動が迅速に行える規模の旅団あるいは増強連隊戦闘団をいくつか編成し、陸幕の直下もしくは即応集団下に配属する。地方では各地方隊の下に大隊を基本とする防衛部隊を置き、不意の攻撃に備え初動の対処を実施する。本格的な防御あるいは反撃は旅団の役割となり、方面隊指揮下に臨時編入されて該方面指揮官のもとで作戦する。
これはアメリカ軍のいわゆる統合司令部に範を採っている。いちおう方面総監を指揮官と想定しているが、別に指揮官を任命するという考え方もあるだろう。即応性と機動性が重要な要素になるが、それを実現するためには各部隊の完結性を高める必要がある。ひも付きでないと移動できないというのでは作戦の柔軟性を大きく損なうからだ。

これは兵力を増やすことなく防衛力を高めるためのひとつの提案だ。「防衛力を増強すべき」という提案そのものに三十一は賛成だが、それがイコール「防衛費を増やすべき」とはならない。必要なのは形を変えることで、相似形のまま拡大(あるいは縮小)することではない。実はこうした改編は多くの国で冷戦後に行なわれてきた。第二次大戦型、あるいは冷戦型の大規模兵力のぶつかり合いを前提とした組織から、紛争の規模は小さくとも即応性の高い、機動性の高い、つまりは戦略的柔軟性の高い編成へとシフトした。日本はこの流れに大きく立ち遅れている。「軍事研究」の提言の著者は、1979年のソ連によるアフガン侵攻で始まった北方重視への改編が最終的に完成したのは冷戦終結後の1991年であったことを例に出して迅速な改編を求めているが、三十一も自衛隊の腰の重さにはやきもきすることがある。例えばUAV(無人機)の導入にしても、多くの国が既製品の購入という形で戦力化しているのに対し、日本ではいまだ研究段階である。いったい何を「研究」しているのやら、おそらくは運用体系といったことを研究しているのだろうけど、それが決まらないと実機の予算がつかないというのは硬直にもほどがある。運用構想が固まったころにはもっと違った形のUAVが出てきているに違いない。これまでの運用構想にない新しい兵器だから研究が必要だという理屈なのだろうが、こういう出始めの時期には兵器自体にできることもどんどん変わっていくし、予想していなかった使い方をされることも多い。まずサンプル購入して使ってみるという発想が必要だろう。本当は10年前にそうしてほしかった。

海空自に関しても、同じような発想で戦略機動を実施しやすい編成に改編する必要がある。もっとも、海自はもともと地域密着ではなかったので基本線は変える必要はないだろう。ただ、護衛艦隊の4個護衛隊群が本当に必要かというのは検討の余地がある。
いずれにせよ、「北方重視」かあるいは「西方重視」かという議論そのものがすでに時代遅れだ、というのが三十一の率直な意見だ。重要なのは、必要な地域に必要なタイミングで必要な戦力を投入できる能力で、そういう観点で編成や装備を根本から考え直すべきだろう。

|

« 2013年9月の打ち上げ | トップページ | ひとりはみんなのために »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/196234/58347716

この記事へのトラックバック一覧です: 防衛力の"増量"反対:

« 2013年9月の打ち上げ | トップページ | ひとりはみんなのために »