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2013年10月15日 (火)

ひとりはみんなのために

世の中「艦これ」ブームだそうだが(秘かに気にはしている)、それを横目に三十一は最近、現代艦艇をいろいろと調べているのだ。なにせ三十一が「世界の艦船」を買い始めたのはまだ冷戦が終わる前で、もちろんそれからずっと「世界の艦船」誌を買い続けていたりするので、なんとなく新型艦艇とかは知っているつもりでいたけれど、ある日気づいてみると「え、このクラスとっくに全艦姿を消してたの!? いつのまに!」ということがよくあったので、一度ちゃんと知識を再構成しておかねばなるまいと思ったのだ。ちなみに上記の状況に該当するクラスは米海軍のスプルアンス級とか英海軍の22型フリゲイトですね。まあ22型はまだ艦齢が残っているにもかかわらず、英海軍の兵力縮小のおかげで売却の憂き目を見たのだが。

ちょうどいいことに最近こんな本が届いた。


ところでこの本はもともと6月発売だったのだが、Amazon で見つけて3月頃に予約注文したはずだったのに手元に届いたのが10月になったのはどういうことかな。よっぽどキャンセルして別の店で買おうかと思いましたよ。

それはさておき、改めて主要国の海軍の艦艇を眺めてみてちょっとびっくりしたのが我が海上自衛隊の戦力の大きさ。原子力潜水艦とか空母とか、そういった政治的な制約がある装備はともかく、純粋に正面兵力だけを比べると日本はアメリカ、中国に次いで世界で3位から5位くらいに入る兵力を運用している。3位から5位は日本、インド、ロシアあたりだろうか。イギリスとかフランスとかイタリアとかドイツとか、ヨーロッパの主要海軍国の兵力を日本と比べてみるとどれを見ても日本の半分以下、というところだろう。海上自衛隊の正面兵力は潜水艦16隻、護衛艦48隻だが、英仏独伊あたりはごくおおまかにいって潜水艦10隻以下、駆逐艦とフリゲイトを合わせて20隻程度というのが相場である。

もちろん、与えられた戦略環境が違うので一概に比較はできないが、米国主導の西側自由主義先進国の一員という立場は同じはずなのに、この差を生み出した戦略環境の違いはいったい何なんだろうと考えてみて気づいたことがある。
英仏独伊の4カ国はそれぞれ日本の半分の兵力を持っている。ということは、逆に言うと英仏独伊を合計するとだいたい日本の倍の兵力になるのだ。この4カ国はNATOの一員で、集団的安全保障体制の下で共同して行動することになる。実際、NATOでは常設合同艦隊というのを編成していて参加各国が拠出した艦艇で構成されている。艦隊の規模はそれほど大きくないのだが、普段からこうした常設部隊を運用している意義は大きい。もちろん、NATO諸国はこの4国だけではない。アメリカは除外するとしても、ある程度の艦隊を保有している国はカナダとかオランダとかスペインなどが挙げられる。

ひるがえって日本の周辺を見てみると、ヨーロッパのような合同艦隊を編成できるようなパートナーとなり得る国は見当たらない。本来であれば台湾とか韓国がこうしたパートナーになればいいのだろうが、政治的にどちらの国も日本と近い将来に同盟を組むとは思えない。つまり極東に関するかぎり日本は(アメリカが参戦するまでは)独力で対処するしかないわけで、そういう意味では日本の海上自衛隊の正面兵力がヨーロッパの半分しかないということになるなあ。怖い怖い。

さらに言うならば、ヨーロッパのような集団安全保障体制がちゃんとできれば今の半分の兵力で済ませることができるということだ。まあそんな単純な話ではないだろうが、もっと兵力を節約できるとか、効率的に運用できるとかのメリットはあるだろう。NATOの例でいくとUAVや輸送機を合同で運用している。各国がそれぞれ自前で運用するのは負担が大きいが、みんなで一緒にやればできるよね、ということだろう。

昨今話題の集団的自衛権と集団安全保障は、実は少し次元の違う話ではあるのだが、少なくとも集団的自衛権なしに集団安全保障はあり得ない。集団安全保障はある意味安上がりで効果的であると言っていいだろう。冷戦が熱戦に転化しなかったもっとも重要な要因はNATOだ。日米安保よりもNATOのほうがよほど包括的で影響力が大きかったに違いない。いちおう日本はNATOのグローバルパートナーという位置づけらしいが、NATOに加盟するかそれが無理でもNATOと何らかの協定を結ぶというのはありかもしれない。防衛力を「節約」しながら効果を高める方策としては有効だろう。そんな体制に入ってしまうとアメリカ主導の武力行使に巻き込まれる、という人がいるけれど、今回のシリア問題に際してイギリス議会はアメリカに同調しての武力行使を拒否した。米英関係は、日米同盟なんかよりもよほど緊密な同盟関係なのだが、それでもちゃんとモノが言えるのである。その裏にはイラク戦争でアメリカのいうままに戦争に参加した結果イギリスにはほとんどメリットがなかったという反省があるのだけれど。

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