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2014年6月10日 (火)

「なぜ都市が空襲されたのか」「海上護衛戦」


三十一がこの種の本を進んで読んでいるのは何故だろう。
防空戦も潜水艦戦も、日本がボロ負けした領域だが、実はこういうところにこそ日本軍と日本人の弱点が如実に現れる。そしてこういう弱点を直視するところから本当の反省が始まるのだ。昔の話というなかれ、こうした弱点を知った上で日々のニュースを見ていると日本人の特性はまったく変わっていないことがよくわかる。

日本にとって先の大戦は国の総力を挙げた(つもりの)大戦争だったが、当の相手のアメリカにとっては片手間で戦っていたことを忘れてはいけない。戦争開始当初、アメリカはイギリスとの協定により対日戦に割り振る戦争努力は全体の3分の1を超えないようにするという約束を交わし、そしてそれはドイツの敗北が確定するまで実際に守られた。

それをもっとも如実にあらわすのが、ひとつは戦略爆撃であり、もうひとつが通商破壊戦である。

日本の都市という都市を焦土にしたB29による爆撃の鍵になる数値は以下の通り。
期間:1944年6月~1945年8月の15ヶ月(マリアナからの本格爆撃が始まったのは1944年11月で、10ヶ月)
出撃数:のべ3万5000機
爆弾投下量:16万トン
損失:414機

それに対してドイツ(占領下のフランス含む)向けの英米による戦略爆撃は
期間:1940年8月~1945年5月(56ヶ月)
出撃数:のべ144万機
爆弾投下量:270万トン
損失:2万1900機

期間は5倍、出撃数は20倍、爆弾投下量は17倍、そして損失は50倍だ。
かの東京大空襲での出撃数は約300機だが、ヨーロッパ戦線では昼間爆撃を担当する米軍と夜間爆撃を担当する英軍がそれぞれ1000機ずつを出撃させるという目標が立てられ、戦争末期には実際にこうした規模での出撃が実現していた。
守る側のドイツ軍も日本に比べて50倍の損害を相手に強いていた。アメリカ軍の爆撃隊にとって、ドイツ深部に出撃するのに比べれば日本への爆撃行はよほど楽な仕事だったろう(縦深が足りないという地勢上の不利はあるが)。

そしてもうひとつ日本が大負けしたのが通商破壊戦である。
ただ、ヨーロッパ戦線と比較する場合に気をつけなくてはいけないのが、攻守が逆転しているということだ。ヨーロッパではドイツは通商破壊をする側だったが、太平洋戦線では日本がされる側になった。

日本商船隊の損害は2100隻、790万トンにおよぶ。これに対してアメリカ潜水艦の損失は42隻。
いっぽうのヨーロッパ/大西洋では、ドイツUボートのスコアは3500隻、1450万トン。そして損失は768隻。

特に目立つのは損失の違い。日本の対潜戦能力の貧弱さと、米英軍の対潜能力の有効さを示すものではあるが、裏返すとそれだけ大量のUボートを通商破壊戦に投入したドイツの戦争努力を示している。日本海軍が実戦に投入した潜水艦はせいぜい100隻あまりだと思う。700隻もの損失は出したくても出せない数字だ。ドイツ海軍が最終的に建造したUボートの数は(中型艦が主体ではあるが)1000隻を超えた。

片手間のアメリカに対して、国力で大きく劣った日本が総力を挙げてあたったかと言えば、実際に詳しく見てみると実はそうでもなかった。当時の日本は軍部独裁のもと全ての国力が戦争に投入されていたイメージを多くの人が持っているだろうが、むしろ民主的なアメリカやイギリスのほうが徹底した面が多い。

結局、どう転んでも勝てる見込みのない戦争だったのだ。
ただひとつ言っておきたいのは、だからと言って実際に戦場であるいは銃後で戦った人々を貶めることにはならないということだ。別にこれは矛盾しないし両立すると三十一は思っている。よく一緒くたにする人がいるけどね。

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