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2014年11月 6日 (木)

「ソ連製」の後継は「ロシア製」か

先月、打ち上げ時にエンジンが爆発したアンタレスだが、やはり NK-33 エンジンのターボポンプが疑われているとの報道だ。

Engine turbopump eyed in Antares launch failure (spaceflightnow.com)

三十一は事故後かなり早い段階から twitter 上でターボポンプの問題である可能性に言及している。爆発直前に噴射炎が一瞬大きくなったことから、ターボポンプが破損して異常燃焼、そして爆発という経緯がまず頭に浮かんだ。
ただ実際のところ、ターボポンプはエンジンの中核部分であり、しかももっとも精密なパーツであるから、「ロケットエンジンが爆発した」と聞いたら「ターボポンプじゃねーの」と言っておけばまず半分以上は正解になるだろう。

懸念されているのは、やはり製造されてから 40年以上になるという経年だ。NK-33 は 原型である NK-15 にパージバルブが追設されているということなので多少の試運転はできるだろうが、全エンジンに対して負荷テストができるわけではない。40年寝かされていたあいだに、一部の機材では劣化が平均以上に進んでしまったのかもしれない。

オービタルサイエンスでは、当面 NK-33 エンジンの使用を見合わせると表明している。代替エンジンを探すと言っているが、現実的には選択肢はそれほど多くない。すでに報道で名前が挙がっているが、やはりロシア製になる RD-193 だ。
アンタレスと同様、NK-33 を一段目に使っている Soyuz 2.1v は将来的にエンジンを RD-193 に変更することをアナウンスしている。NK-33 と RD-193 の代表的な仕様を Wikipedia から抜き出してみると

        推進剤          推力            重量
NK-33   RP-1/LOX        1638kN (167t)   1222kg
RD-193  RP-1/LOX        2090kN (213t)   1900kg

Comparison of orbital rocket engines (wikipedia)

推進剤が同じ組み合わせであることは重要だ。少なくとも液酸液水 (LH2/LOX) エンジンは選択肢にならない。ヒドラジン系まで広げてもせいぜい RD-276 (プロトンの一段目に使用) くらいだろう。RD-193 が最有力候補というのは揺るがない。いずれにせよ、NK-33 の供給には限りがあるので次を考えておく必要はもともとあった。それはオービタルサイエンス社も十分承知しており、2017年には新しいエンジンを使用するアンタレスロケットの実用化が予定されていた。そのエンジンとして取りざたされていたのが RD-193 なのである。であるから、もともとあった計画を前倒ししただけ、とも言えるだろう。
とは言え、RD-193 はまだ開発中のエンジンだ。それに対して、NK-33 はすでに在庫がある(40年前から!)のですぐに使える。当面は NK-33 を使用して、在庫がなくなるまでに RD-193 に切り替える、というのがソユーズ 2.1v や アンタレスに共通の戦略だった。
ただ、類似のクラスのエンジンと言ってもエンジンの換装はそんなに簡単な仕事ではない。パソコンの CPU を交換するのとはわけが違う。前倒しと言っても 2017年が 2016年になるのがせいぜいだろう。その間は「サードパーティー」による打ち上げも検討する、とされている。オービタルサイエンス社は NASA から ISS への補給を受注しているが、その手段まで指定されているわけではない。何であっても荷物が目的地に届けばいいのだ。

RD-193 の開発自体にそれほど懸念はない。すでに十分な実績を重ねている RD-170 を原型にしている。RD-170/171 はひとつのポンプで4つの燃焼室に燃料を供給している(上述の通り、ポンプはエンジンの中核なので燃焼室がいくつあってもポンプがひとつなら1台のエンジンとみなすのだ)が、RD-193 は燃焼室をひとつにしたモデルになる。ポンプひとつで燃焼室ふたつという RD-180 もアトラスロケットですでに50回の打ち上げをこなしている(成功率98%)。

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2014年11月 4日 (火)

2014年10月の打ち上げ

10月は多かった。最近珍しい二桁の11件。

7日 05.16GMT      種子島/H-2A (ひまわり8号)
15日 20.02GMT     スリハリコタ/PSLV (IRNSS-1C)
16日 21.43.52GMT  クールー/アリアン5 (Intelsat 30, ARSAT-1)
20日 06.31.04GMT  太原/長征4C (遙感22)
21日 15.09.32GMT  バイコヌール/プロトン (Ekspress AM6)
23日 18.00.04GMT  西昌/長征3C (嫦娥5)
27日 06.59.03GMT  酒泉/長征2C (試験 11-08)
28日 22.22.38GMT  ワロップ島/アンタレス (Cygnus CRS Orb-3) 失敗
29日 07.09.43GMT  バイコヌール/ソユーズ (Progress M-25M)
29日 17.21GMT     ケープカナベラル/アトラス5 (GPS 2F-8)
30日 01.43GMT     プレセツク/ソユーズ (Meridian 7)

Orbital Launch Chronology

なんと言っても10月のトピックはアンタレスの打ち上げ失敗。
絵が派手なだけにマスコミを賑わしていたが、古いフィルムを見ているとあのくらいの映像はよく見かける。射点で爆発するのは近頃珍しいけど。思いつくかぎりでは2007年1月20日の、シーランチでの打ち上げ失敗以来だ。

原因はまだ調査中ということだが、映像を見るかぎりでは一段目のエンジンのような気がする。このエンジンは例の NK-33 なのでちょっと話題になった。おかげで昔の記事のアクセス数が急に増えたらしい。

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