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2015年1月 7日 (水)

HMAS Soryu

「日豪 潜水艦を共同生産」 (Yahoo!ニュース)

キーワード検索ランキングが急に上がったらしく、何があったのかと思ったら毎日新聞が報じたのが Yahoo! ニュースに転載されたらしい。
だいぶ前から話は出ていたのだが、いよいよ本決まりになって確定報道が出るとあたかも突然話が降って湧いてきたかのように取り上げられる、というパターンにはよく遭遇するなあ。例えば、中国が宇宙遊泳を成功させたときにも同じような現象が起きた。詳しくは以前の記事を読んでくだされ。

話を元に戻すと、今世界を見回してみると、3000トンクラスの大型・非核動力潜水艦を自力で開発生産している国はほとんど無い。米英仏は原潜に特化してしまって、非核動力潜水艦からは撤退した(フランスの企業がスペインで輸出向けの潜水艦を建造している)。潜水艦の輸出国としてまず挙げられるのはドイツだが、ドイツの潜水艦は比較的小型の沿岸警備型が主力だ。そういったラインナップが中小海軍国のニーズに合致してマーケットでの成功を得られたのだが、オーストラリアのニーズに合わない。
実のところ、このクラスの大型潜水艦を手に入れようとするなら、ロシアのキロ級潜水艦くらいしか選択肢がないのが現状だ。いくら冷戦が済んだからといって、オーストラリアがロシアから潜水艦を導入するというのは無理があるだろう。方向は逆になるのだが、フランスがロシアから強襲揚陸艦を受注して、もう完成も間近なのだが最近のウクライナ情勢のあおりを食らって引き渡しが延び延びになっている。取引相手としてはあまり優良顧客とは言えない。

オーストラリア海軍は大戦中から潜水艦の運用を初めているが、これまで一貫してイギリス製の潜水艦を使用してきた。しかしイギリスは非核動力潜水艦の建造をやめてしまった。オーストラリアでは自国海軍艦艇の多くを国内で建造しているが、独自設計になるものはそれほど多くない。現在運用しているコリンズ級潜水艦はスウェーデンのヴェステルヨートラント級を拡大したもので、1990年から2003年にかけて6隻が建造された。この代艦が今模索されている。
現時点で候補に挙がっているのは
・日本の「そうりゅう」
・スペイン(フランス設計)の「スコルペヌ級」拡大型
・ドイツの 214型の拡大型
だが、性能と実績では「そうりゅう」が有利だろう。他のコンペはコストパフォーマンスを前面に押し出してくるに違いない。オーストラリアの想定作戦海域は、インドと向き合うインド洋と、東南アジアの多島海になるだろう。東南アジア多島海はともかく、インド洋を横断して作戦することを想定するならば、それなりのサイズの船体が必要になる。

では仮にオーストラリア海軍が日本の「そうりゅう」を採用したとすると、日本にどういうメリットがあるのか。メーカーたる三菱重工・川崎重工の利益はひとまず置く。アメリカやイギリスが提供できない種類の装備品を提供することで、潜在的な同盟国の防衛能力を高めることは、国際社会に対する貢献という観点では得点となるだろう。冷戦期のような東西陣営の対立という構図は過去のものになったが、共通の価値観と利益をもつ一連の国家群が、相互に安全保障や防衛に貢献し合うことによって総体として防衛力を高めることは、結局は自国の利益にかなう。防衛装備品の共同開発や、能力の高い製品を相互に輸出し合うのは、そのためのひとつの、そして有力な手段だ。

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コメント

はじめまして、あけましておめでとうございます。
"くす"型警備船について調べていたらここに辿り着きました。
古本を読み漁ってましたが、量も質も、いい情報がなかなか集まりません。
なにかお薦めの本や記事があれば教えて下さい。

投稿: hiro | 2015年1月12日 (月) 21時57分

残念ながら、新刊ということでは正直思い当たりません。
「くす型」に関していえば、「世界の艦船」の古いバックナンバーの特集記事を寄せ集めたというのが実態です。

投稿: admiral31 | 2015年1月15日 (木) 22時00分

やはりそうですか
「世界の艦船」「空と海」「丸スペシャル」などから記事を寄せ集めましたが満足できるほど情報が集まりませんでした。
海人社あたりから貸与艦の詳細を本にして出してほしいですね。
ありがとうございました。

投稿: hiro | 2015年1月16日 (金) 21時53分

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