« 2015年8月の打ち上げ | トップページ | せんそーはんたい »

2015年9月17日 (木)

「特攻-戦争と日本人」


読み終えて思ったのは、「入門書だなこりゃ」。

正直新しい情報がほとんどない。一部、著者が独自にインタビューした様子などが記述されているけど、そこから何か新しい発見があるかと言えばそれもない。
通説を寄せ集めてまとめた、という印象が残った。この厚さ(薄さ)によくまとめた、というところだけは評価する。なので「入門書」なのだよ。

しかし、「入門書」のわりには基本的なミスが目についた。
特にごく初めのほうで、真珠湾攻撃に参加した甲標的の乗員のうち、岩佐直治大尉を「佐直治大尉」と「岩」が欠けた形になっていたのは単純なミスあるいは誤植として許容もできるが、「捕虜第一号」として知られる酒巻少尉をずっと「坂巻少尉」と表記しているのは許容できない。これが6ページ目なのである。しょっぱなに出鼻をくじかれた感があった。

そのまた少し先、
『米軍と違い、日本に「空軍」はなかった。陸海軍がそれぞれ航空隊を持っていた。』
とあるけれども、米軍で「空軍」が独立したのは戦後の1947年である。それまでは
『米軍に「空軍」はなかった。陸海軍がそれぞれ航空隊を持っていた。』
三十一にはどこが「米軍と違う」のかわからない。

それから違和感を憶えたのは次の記述。

・・・昭和天皇は「昨日のレイテ湾における陸軍特別攻撃隊万朶隊による戦果等を御嘉賞になる」と述べた。天皇はやはり特攻を「御嘉賞」、ほめ讃えていたのだ。(略)・・・天皇は喜んだ。

まず著者は天皇の「御嘉賞」を文字通り「喜んだ」と解釈しているがそれはナイーブにすぎる。天皇や皇族に対する当時のこうした表現はかなり割り引いて考える必要がある。普通にしていれば「ご機嫌殊の外麗しく」と報じられる。宮中で「ご不満」というのは実際には「激怒」にあたる言葉だそうである。「御嘉賞」というのは実際には「戦果があったのはよかった」くらいでしかなかった可能性が高い。
また、身を捨てて戦果を挙げた前線の兵士に対して天皇がとれる態度として「御嘉賞」以外の何があり得ただろう。

全体に思わせぶりな記述が多く、「何が言いたいんだ」と首をかしげることがしばしばだった。まあ、「何が言いたい」のかはなんとなくわかるのだが、それをそうと書かないところがもどかしい。

この感想を書くために改めて著者プロフィールを見てみて納得。
本職は新聞記者だ。しかも毎日新聞。

|

« 2015年8月の打ち上げ | トップページ | せんそーはんたい »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/196234/62300997

この記事へのトラックバック一覧です: 「特攻-戦争と日本人」:

« 2015年8月の打ち上げ | トップページ | せんそーはんたい »