« 2015年10月の打ち上げ | トップページ | アイドリングストップ »

2015年11月 4日 (水)

相手の気持ちになって考えてみた

かつて「相手の気持ちになって考える」という記事でも指摘したのだが、そこでは中国や韓国の意図を把握することが必要だと述べた。
しかし個別の外交案件ではなく戦略的な外交安全保障政策を考えるときに、まずその意図を把握すべきなのは実はアメリカだ。

歴史的に、アメリカにとって極東政策の要になる国はふたつ。言うまでもなく日本と中国だ。
そしてアメリカが極東地域と関係を持ち始めた19世紀半ば以降、極東政策の基本路線はほぼ一貫して中国重視である。アメリカの極東政策が日本を軸に展開されたのは、セオドア・ルーズベルト大統領個人の日本びいきに依存した日露戦争前後の一時期と、中国が共産化してアメリカと対決姿勢をとり友好関係を築く術がなかった冷戦期だけで、マーケットの観点からも政治上の観点からも中国を重視するのがアメリカの基本的な極東政策と考えるべきであろう。大多数の日本人には聞きたくない話かもしれないがこれが現実だ。

アメリカ国務省の極東政策担当部局では親日派と親中派がしのぎを削っているが、だいたいにおいて親中派が優勢だ。現時点ではまだ日本の比重が大きいが、それは冷戦時代に日本との間に作り上げられた同盟関係と、その間に急速に成長した日本市場を捨ててしまうのが惜しいからで、どうしても中国と日本のどちらかを選んでどちらかを切り捨てなければいけない事態に陥ったときに、切り捨てられてしまうのは間違いなく日本だろう。逆に言うと、アメリカにはそういう選択が(究極的には)可能だということである。もちろん、アメリカ自身はそういう自らの立場を理解している。その上で日本と中国を両天秤にかけているのだ。実際にアメリカが日本を見捨てるというシナリオは近い将来にはないだろう。しかしこれは(特に日本に対して)強烈な外交カードとして機能する。日本からしてみれば、アメリカに見捨てられるという事態はただちに破滅を意味し、選択の余地がない。

冷戦終結後もしばらくの間日本の比重が大きかったのは、まずアメリカにとって日本市場のほうがうまみがあったからだ。開放直後の中国では主な需要は日用品などの軽工業品で、アメリカが強みとしている分野ではなかった。それに対して日本は精密機器や食糧といったアメリカが強い分野で需要があり、うまみが大きかった。しかしそうした質の違いはかなり薄れてきている。そうなると12億対1.2億という市場規模の違いが大きく響いてくる。実際、極東の政治情勢に関心の薄いヨーロッパ諸国は雪崩をうつように中国との関係強化に動いている。純粋に市場としてみたときに中国と日本とではもはや比較にもならないのだ。

市場として勝ち目がないとすると、アメリカをひきとめるためにはどうすればいいだろう。ヨーロッパ諸国は極東に政治的なコミットメントが無いから雪崩をうって中国重視に動いた。アメリカがそこまで極端に走っていないのは、「世界の警察官」であることをやめたとは言え極東に政治的に関わっているからだ。日本に関していうと、それが日米安保であり、安保を根拠として日本に保持している基地である。経済的なメリットで大きく見劣りするとしても、こうした利点が大きいとアメリカが考えるなら、日本を見捨てることはないだろう。つまり在日米軍基地は、「アメリカの戦争に日本が巻き込まれる」要因という見方もあるが、「日本の防衛にアメリカを巻き込む」ツールでもある。こうしたツールをうまく使うためには日米安保が「アメリカに守ってもらう」という受け身の姿勢から「アメリカに守らせる」という能動的な姿勢に切り替える必要があるだろう。ある意味、権謀術数を駆使するようなドライな発想をもって同盟国アメリカに対する場面があるべきだし、なくてはならない。

こうして「アメリカに見捨てられない」ための保険をかけつつ、引きつづきアメリカが日中を両天秤にかけ続けられる環境を維持して二者択一を迫るような場面が現出することを防止する。これを日本の基本戦略として想定したときに、米軍との連携強化は必然となる。

|

« 2015年10月の打ち上げ | トップページ | アイドリングストップ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/196234/62614404

この記事へのトラックバック一覧です: 相手の気持ちになって考えてみた:

« 2015年10月の打ち上げ | トップページ | アイドリングストップ »