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2016年11月 2日 (水)

南関東鉄道青空線

ここのところの週末合計3日間を使って、南関東にある非電化路線にいくつか乗ってきた。具体的には関東鉄道常総線、小湊鉄道、いすみ鉄道、JR久留里線の4つだ。

ことの発端は、時刻表を見ていて「サンキュー!ちば」という恥ずかしい名称の企画乗車券をみつけたことにある。名称はともかくとして、千葉県内のJR全線と小湊鉄道、いすみ鉄道、銚子電鉄をフリーエリアに含み、有効期間2日間で3900円というコストパフォーマンスの高いきっぷだ。
非電化単線鉄道愛好会会長としては、さほど遠隔地というわけでもない房総地区に未乗車の非電化線が残っていることが目障りでしょうがなかったし、内房線外房線総武本線という幹線は乗車済みだったもののそれ以外の例えば成田線とか東金線、鹿島線など千葉地区の路線が手薄になっていた。このあたりの千葉地区の路線についてはまた別の事情もあるのだがその話はあとにしよう。
いずれにせよ、そう遠くない将来にこのあたりの問題は解決しておかなくてはいけないという問題意識があったところにこのきっぷを見つけたので、これを活用しようという気持ちになった。ただし、直後の週末には仕事の当番が入っていて日曜日しか使えない。せっかく2日間有効なのにもったいない。そこで「サンキュー!ちば」は土日両方が使える週末にとっておいて、次の日曜には1日有効の「週末フリーパス」を使って別の非電化路線を攻略することにした。それが関東鉄道常総線だ。

茨城県の鉄道はほぼすべてが交流電化か非電化で、直流電化されている区間は南部のごく一部にすぎない。それには筑波の地磁気観測所の存在が関係している。観測所の近傍で大容量の直流電車を運行していると観測データに影響をおよぼす恐れがあるため、茨城県内の常磐線と水戸線は地磁気観測に影響のない交流で電化された。民鉄としてはめずらしく、つくばエクスプレスも守谷以北は交流電化されている。通勤通学需要の高い関東鉄道でも電化計画がなかったわけではないのだが、中小私鉄に交流電化の負担は過大で断念され、非電化のままとなっている。そのかわりというわけでもないだろうが、起点の取手から水海道までの間は複線化されている。
取手駅できっぷを買おう(関東鉄道はフリーエリア外なので)としたところ、休日のみ有効の一日フリー乗車券の広告が目に入った。「下館まで片道でもお得です」とあるが、下館まで普通に買うと1510円、一日券は1500円。確かにお得かもしれないけど10円。まあでもいちいちきっぷを買うよりは面倒がなさそうなので一日券を買って入場。常総線は、複線区間の水海道以南と単線区間のそれ以北で運行がわかれていて、直通はほとんどなく水海道での乗り換えとなる。取手を出てしばらくのあいだは部活帰りらしい高校生を中心にそれなりに混雑していた。とは言っても立ち客が出るほどでもない。使用している車両はロングシートの軽快気動車2両編成で、複線区間ではワンマン運転になっていない。しかしだんだんと乗客が少なくなり守谷を過ぎるあたりでかなり空いた。この状態で車両基地をかすめて水海道に到着。ここで乗り換え。
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水海道から北は1両編成のワンマン運転になる。茨城県西部のこのあたりは関東平野の真ん中で、田んぼと町並みが入り混じる中をトコトコと走る。ところどころに雑木に覆われた小丘がちりばめられている。現代ではすっかり平地になってしまっているが、本来はこの付近は鬼怒川や利根川が形成した湿地帯で、いま丘になっている微高地は当時は小島として希少な乾燥地であっただろう。平安時代には平将門がこの付近を根拠にして叛乱を起こし、南北朝時代には北畠親房がこうした小島のひとつに設けられた城に籠もって北朝勢力に対抗しつつ神皇正統記を執筆した。一見なんの変哲もなさそうな風景が興味深く見えてくる。常総線に「大宝」という駅があるが、大宝城は北畠親房が籠もった関城とともに関東での南朝方の拠点となった城だ。駅名を見て、近くの小丘のどれかが城跡だろうとあわてて地図アプリを起動して場所を確認しようとしたが、そんなことをしているうちに通り過ぎてしまった。無念。
終点下館到着。ここからはやはり非電化の真岡鉄道が出ているので時間があれば乗っていたのだが、すでに日曜も夕方に近く、断腸の思いで帰宅にかかる。水戸線から小山で乗り換えて東京に向かう。実は水戸線も初乗車。かつて常磐快速線を走っていたE501系と久々の再会。小田林と小山の間に交直セクションがあったはずだが、わずかにモーター音が低くなったような気もするが室内灯が消えるわけでもなくよくわからなかった。

さて翌週は本番。土曜日の昼前頃、駅の自販機で「サンキュー!ちば」を買う。この日の目標は、まず小湊鉄道からいすみ鉄道に乗り継いで房総を横断する、というものだった。小湊鉄道の列車はそれほど多くないが、いまのペースなら昼過ぎに五井を発車する列車に間に合うつもりでいたのだが、総武線の中であらためてダイヤを確認したところ、その列車は終点までいかず途中駅までであることが判明。次の列車まで待つとそのあとの予定がほとんど消化できなくなってしまう。そこで急遽、小湊鉄道といすみ鉄道を翌日にまわしてこの日は久留里線を往復することに変更。幸いなことに木更津での接続もちょうどいいようだ。
木更津で内房線を降りると目の前のホームに待っていたのはキハE130の2両編成。久留里線の列車はほぼキハE130に切り替わっているようだが、JR東日本のローカル線用気動車の主力がこれまでのキハ100/110系からキハE130に替わっていくのかといえば、そう話は単純ではなさそうだ。JR東日本では純然たるディーゼル車であるキハE130のほかに、小海線で運用しているハイブリッド車キハE200や、烏山線で実証実験をしている蓄電池電車EV-E301系など、次期主力気動車の候補があってJR東日本でもまだ決めかねているらしく水郡線と久留里線に投入されて以降、キハE130系は増備されていない。
北に向かって発車した列車は大きく右、つまり東にカーブして内陸部に向かう。一見して常総線と似たような田園地帯だが、やや起伏が多いようだ。やはり房総半島は常総平野と異なり台地が主体ということだろう。起点の木更津から終点の上総亀山まで全部で14の駅があるが、このうち列車交換設備があるのは横田と久留里の2駅だけ。ほかの駅はすべていわゆる棒線駅になってしまった。その数少ない列車交換可能な横田と久留里ではいずれも対向列車と行き違いを行なった。逆方向に戻る列車でも同じだったから、この2駅を結節点とするネットダイヤが組まれているのだろう。つまりこれ以上増発の余地が無いということだ。ここで先週乗った関東鉄道常総線と比較してみると、常総線の水海道以北の単線区間では、同じく14駅中3駅を除いてすべての駅に交換設備が残っていた。ただしそのほとんどはスプリングポイントになっている。交換設備をどんどん撤去してメンテナンス費用を圧縮する一方でダイヤの自由度が低くなってしまうのと、スプリングポイントでも交換設備を残しておくのと、長い目で見てどちらが得策だろうか。とりあえず三十一はこういうレベルでのJRの判断力は信用していない。
横田と久留里は、風景の面でも結節点になっているようだ。横田を過ぎるとわずかに勾配がきつくなってきた。何気なく車窓を眺めていると気づきづらいが、外に見える水田の境界にある段差に注目すると登り勾配であることがわかる。水田は水をはる関係で水平に作られているから、隣り合う一枚一枚の田んぼの境界線に段差があれば全体として土地が傾いていることを意味する。久留里を出ると今度は明らかな勾配。最後の一駅区間、上総松丘から上総亀山までは完全な山岳路線となり、トンネルをくぐると終点の上総亀山。
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この駅から少し歩いたところにバス停があって、勝浦までバスで出られるらしいのだが、駅前の地図を見てもそれらしいものが見つからない。あたりを見渡しても見当がつかない。方角としては駅の裏側のはずなのだが、どうもたどりつける気がしなかったので折り返しの列車で木更津に戻ることにする。久留里線はそのまま素直に折り返したが、木更津から帰宅するまでの経路が往きと同じでは面白くないので、一度成田に出て成田線支線で我孫子を経由して初日は帰宅。

土曜日は出発が遅かったせいで思うように路線を攻略できなかった。その反省の上に立って、日曜は6時に起床して7時過ぎの列車で出発することによる。これは平日の出勤より早い。だからやることが両極端なんだってばさ。
目指すのは09:25に五井を出る小湊鉄道の列車。少し余裕をもって到着。跨線橋をわたって小湊鉄道のホームに行くと、2両編成の列車が待っていた。外観は国鉄のキハ20を髣髴とさせるが、車内は全面ロングシートとなっている。進行方向右側の前方が見通せるようになっているが、すでにカップルに占拠されていたためそのやや後ろに席をとる。五井駅のホームの横は車両基地になっていて、かなりの数の車両が留置されている。なかには塗装が色あせている車両もみうけられた。
五井を発車した列車は小櫃川とつかず離れず走る。昨日の久留里線と印象はそれほど大きくかわらない。しかしやはり施設は古いようだ。今では珍しくなった木製の改札口があちこちの駅に残っていた。上総牛久までは比較的平坦で、旅客も多いのだろうかほとんどの駅に交換設備が残っていた。これもスプリングポイントだが。上総牛久を出ると山岳路線というほどではないが山がちになりところどころで勾配が厳しくなってくる。なお上総牛久を過ぎると交換可能な駅は里見駅だけになる。その里見駅でしばらく停車。地元の商店会か何かが繰り出して駅のホームに店を出していた。この間にしばし撮影。五井でも撮影はしていたのだが、光線の具合によるのかこちらのほうが出来がよかったのでここに掲げておく。
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この先は完全に山の中。高滝湖というダム湖や養老渓谷などの観光資源が点在する。乗客のかなりの部分は養老渓谷までで下車していき、終点まで乗るのはほとんどがいすみ鉄道に乗り継ぐらしい。終点の上総中野は、ふたつ並んだホームをそれぞれ小湊鉄道といすみ鉄道で使用し、ホーム間は構内踏切で連絡している。駅舎は共通のようだ。しかし駅の外に出る余裕がなかった。接続するいすみ鉄道の列車は、旧国鉄のキハ28とキハ52の2両編成。キハ28は全席指定ということなのでキハ52のほうに座る。サボや車内の掲示は意図的に残しているらしく、「糸魚川」などという文字が見える。それと車内中にちりばめられたハロウィーンのデコレーションが実にミスマッチだ。窓から下がるカボチャのお化けの飾りものは窓から外を見たい三十一には邪魔者でしかない。復元された大多喜城が見えてくると大多喜に到着。ここで国鉄型列車は終着となり、いすみ350形1両編成の普通列車に乗り換える。いすみ鉄道は春先の菜の花で有名だが、このあたりがその場所かなと思ったのはもう終点の大原に近いところだった。

さてこれで主目的である非電化鉄道は攻略できたが、まだ昼前なので当然まっすぐ帰宅するわけもない。せっかく「サンキュー!ちば」を手にしていることだし。そこで大原から大網、成東、銚子を経て成田線で成田に向かうことにする。千葉県の外周をぐるりと一周するわけだ。
これには実は30年来の因縁があり、三十一が中学生だったころに友人に誘われて初乗り運賃での大回り乗車をしたことがある。そのときのルートはもはやうろ覚えだが、確か我孫子から成田、佐倉、成東、大網、千葉と進んだと思う。つまりそのときに東金線に乗車しているのだが、なにせ遙か太古の昔のこと、ほとんど記憶がないばかりか本当に東金線に乗車したかどうかも確信がもてないのだ。なので三十一にとって東金線は「乗ったはずだが確信がもてない」路線として常に心にひっかかっていた。いっぽうで、成田線(我孫子支線でない本線)は大回り乗車できたはずなのだが夜までに帰ってこられなくなるという理由で断念した記憶がある。しかしこれまた確信がないのだ。というわけでこちらは「乗っていないはずだが確信がもてない」路線になってしまった。同じように「乗ったはず」な路線は八高線の南半分、高麗川から八王子、さらに横浜線を経て相模線で茅ヶ崎までがこれに該当する。ちなみにこの当時この区間はほとんどが非電化だった。今になって中学生だった自分が羨ましく思える。こうした区間に残った曖昧さを今回一部だけでも解消することができた。これで千葉県内のJRのほとんどと小湊鉄道、いすみ鉄道、銚子電鉄は攻略することができた。そのかわり、最終日は朝の7:38から乗り始めて戻ってきたのは17:38。ちょうど10時間かけて12本の列車を乗り継いだ。さすがに疲れました。

最初の日曜日の旅程:
松戸(1242)→取手(1306) 1239H
取手(1315)→水海道(1349) 3083レ
水海道(1407)→下館(1456) 5085レ
下館(1459)→小山(1520) 752M
小山(1532)→上野(1649) 1575E
上野(1654)→松戸(1716) 1685H

土曜日の旅程:
松戸(1110)→新松戸(1117) 923S
新松戸(1122)→西船橋(1140) 1031E
西船橋(1143)→千葉(1206) 1048B
千葉(1215)→木更津(1254) 167M
木更津(1301)→上総亀山(1408) 933D
上総亀山(1423)→木更津(1531) 938D
木更津(1545)→千葉(1628) 2564F
千葉(1634)→成田(1710) 1463M
成田(1716+2)→我孫子(1800) 876M
我孫子(1805)→松戸(1818) 1784H

二度目の日曜日の旅程:
松戸(0738)→新松戸(0745) 603K
新松戸(0747)→南船橋(0808) 615E
南船橋(0815)→蘇我(0832) 705A
蘇我(0853)→五井(0904) 147M
五井(0925)→上総中野(1038+6) 9A
上総中野(1054)→大多喜(1116) 102D
大多喜(1121)→大原(1149) 58D
大原(1242)→大網(1322) 262M
大網(1326)→成東(1343) 1647M
成東(1344)→銚子(1436) 351M
銚子(1508)→成田(1628) 454M
成田(1638)→松戸(1738) 1734H

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