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2016年12月 7日 (水)

2016年11月の打ち上げ

前回よりは早いかな。

11月は9件。中国4、アメリカ2、ロシア1、ヨーロッパ1、日本1。

2日 0620GMT 種子島/H-2 (ひまわり9号)
3日 1242GMT 文昌/長征5 (実践 17)
9日 2342GMT 酒泉/長征11 (XPNAV 1)
11日 1830GMT バンデンバーグ/アトラスV (WorldView-4)
11日 2314GMT 酒泉/長征2 (YH-1)
17日 1306GMT クールー/アリアン5 (Galileo x4)
17日 2020GMT バイコヌール/ソユーズ (Soyuz MS-03)
19日 2342GMT ケープカナベラル/アトラスV (GOES-R)
22日 1524GMT 西昌/長征3 (天鏈 1-04)

一般ニュースでどうだか知らないが、個人的に最大の話題は新型の長征5。
ここ数年、中国が続々と新たな打ち上げ機を就役させているが、それはつまり新式のエンジンが実用化したということだ。長征5はその集大成ともいうべき機体で、一段目主エンジンの YF-77 とブースターに使用されるエンジンの YF-100 はいずれもこれまでの長征シリーズで使用されてきたエンジンとは一線を画している。とくに YF-77 は今回の打ち上げが初飛行となる。YF-100 は長征7の主エンジンとしてすでに数回の飛行をこなしている。

YF-77 は液体水素/液体酸素を推進剤とするエンジンで、現用のエンジンではアメリカの RS-68 (デルタ)、ヨーロッパの Vulcan (アリアン5)、日本のLE-7 (H-II 一段目)や LE-5 (H-II 二段目) と同じ組みあわせだ。この組みあわせは化学燃料ロケットとしてはもっとも効率の高いエンジンとなり、それだけハードルは高いわけだが燃焼サイクルにオープンサイクルのガスジェネレーター (GG) を採用した手堅い設計になっている。これは Vulcan や RS-68 と同じ方向性だ。LE-7 や SSME (スペースシャトルメインエンジン)は二段燃焼サイクル (SC) の凝った構造を採用しているがそれとは対照的である。

いっぽうで YF-100 はケロシン系燃料と液体酸素の組みあわせで、液酸液水に比べるとパワーが出しやすい。ブースター向けということだろう。ところが中国ではこのエンジンで酸素リッチ二段燃焼サイクル (ORSC) を採用した。これはアメリカでもまだ実用化できていないエンジンで、100トンクラスのエンジンとしてはロシアの RD-180 シリーズしかない。NK-33 もそうだがもはや「現用」とは言えまい。

YF-77 二基をメインエンジンにして、YF-100 二基からなるブースターを4本束ねた長征5では、海面上推力は1000トンを超す。三十一のざっくりした感触だが地球低軌道に20トン、静止軌道に5トンの打ち上げ能力はあるだろう。大型の衛星打ち上げはもちろん、上部段を使って複数の衛星を別々の軌道に打ち上げることでひとつひとつのコストを下げるということもできるだろう。衛星打ち上げサービスにおいて、これまでの安かろう悪かろうから脱却しようとしている姿勢がうかがえる。

最後にひとつ重要なことを指摘しておくなら、これらの新型ロケット(エンジン)は軍事用への転用は難しい。衛星打ち上げと弾道ミサイルには共通点は多いが、それぞれの最適解を追い求めるとどうしても相容れない部分が出てくる。中国にとって衛星打ち上げは、ミサイル開発の余技ではなくそれ自体が目的となってきていることを示しているのだが、一般ニュースでそうした分析をしているところは見たことがない。

Orbital Launch Chronology

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