« 2016年6月の打ち上げ | トップページ | 2017年7月の打ち上げ »

2017年7月28日 (金)

時期外れのサクラチル

日報問題がとうとう大臣の辞任にまで発展した。
稲田大臣が就任したとき三十一は「期待する」と書いたが、素人さが悪いほうに出てしまったようだ。結果として稲田氏には防衛大臣というよりも政府の一員たる大臣の資質に欠けるところがあったと言わざるを得ない。もとが弁護士だからなあ。防衛大臣はひとまず岸田外務大臣が兼任することになったので、来週にも行なわれる見込みの内閣改造で後任が任命されることになるだろう。現時点で取り沙汰されている後任は小野寺五典や中谷元といった防衛大臣経験者の再起用で「素人はこりごり」という政界の雰囲気が伝わってくる。

雇われ社長たる防衛大臣の更迭よりも、防衛省と自衛隊でもっと影響が大きいのはむしろ監督責任を負って詰め腹を切らされる事務次官と陸幕長だろう。

黒江事務次官の後任は豊田官房長と伝えられている。
岡部陸幕長は本来であれば、河野統幕長の有力な後任候補だったのに引責辞任でそれどころでなくなった。後任が決められないので河野統幕長の定年は二度も延長されてきたけど、これでようやく後任が決まって晴れて勇退できるだろう。次期統合幕僚長は空自の杉山空幕長となることがほぼ確定した。

杉山良行航空幕僚長は防衛大24期卒業、岡部陸幕長と村川海幕長はいずれも防大25期なので先任順からすれば順当なのだが、自衛隊の中で最大所帯である陸自はもう5年以上統幕長を出していない。さすがに次は陸から、というのが大方の予測と期待だったのだがまたまた流れてしまった。

空幕長の昇進と陸幕長の辞任で、それぞれ後任が必要になる。
陸についてはすでに8月8日付の人事が公表されている。25期の岡部陸幕長と、26期の鈴木純治中方、森山尚直東方、小川清史西方の各総監が揃って退職となり、陸幕長は27期の山崎幸二(現・北部方面総監)が就任する。

そして空だが、現役の防大25期生はすでに残っていない。以前名前を挙げた航空支援集団司令官の小城真一(26期)も8月8日で退職。26期なら総隊副司令官の小野賀三、27期なら総隊司令官の前原弘昭、空幕副長の丸茂吉成、教育集団司令官の荒木淳一あたりだが、さて。

日報問題について、まずはすでに意味のないPKO5原則をできるだけ速やかに撤廃するべきだろう。今回の問題はPKO5原則の「戦闘」という文字と、日報の中の「戦闘」という文字がたまたま同じ単語であったことに端を発したもので、その後の議論はなんら実際的なものではない神学論争にすぎなかった。その「戦闘」が実際どの程度のもので、自衛隊にはどの程度危険があったのかという議論はなされていない。それもこれも時代遅れな (1992年決議) PKO5原則を金科玉条のごとく大事にしてきたことが根本原因なので、こんな空文はさっさと捨て去るのがよい。

また何よりも怖いのは、今回の一件のせいで今後日報を作成する際に「忖度」が働くことだ。日報は何よりもまず正確かつ率直であるべきで、そこに「忖度」を含ませるべきではない。日報は指揮官の重要な判断材料であり、それがわかりにくく実態が伝わらないようでは適切な指揮統制ができない。その結果、近くは犠牲(負傷者や死者)が生じる可能性を高め、大きくは日本の国益全体を損なうことにもなりかねない。そのためには「日報とは本来そういうものだ」という姿勢を組織として強く押し出し、現場の作成者を守るとともに、一言半句をとりあげて批判する野党やマスコミに対して堂々と反論すべきだろう。今回はそれをせずに小手先の対応でやり過ごそうとしたのが一番よくない。

なお、今回陸自内部から「稲田大臣は日報の存在を非公表とすることを了承していた」というリークがあったと報じられている。これが事実かどうかはまだ未確認だが、もし事実だった場合は「シビリアンコントロールが機能していない」とするコメントが見られる。それは「シビリアンコントロール」を理解していないとしか思えない。
大臣の意向に反して部下が情報をリークする、というのは確かに組織の統制がとれていないと言わざるを得ない。しかしそれはあくまでリークした者「個人の反乱」であってそれをもってただちに「シビリアンコントロールが効いていない」とするのは行き過ぎだろう。同じようなことは戦前の日本の陸軍省でも起きていた。当時の日本の陸軍大臣は現役軍人でシビリアンコントロールという言葉すら知られていなかったが、それでも部下が大臣の意向に逆らって動くのは問題だという認識はあった。また現在でも防衛省以外の役所(たとえば外務省とか)で同じことが起きてもやはり問題になるだろう。つまり「シビリアンコントロール」以前の単に内部統制の問題でしかない。これを「シビリアンコントロール」の問題ととらえている人間は「シビリアンコントロールとは制服組が政治家のいうことなら何でも無条件で聞くこと」と誤解しているのだろう。
稲田大臣による「非公表」の判断は政治的判断ではあるものの「不適切な行動」の疑いが強い(不法行為とまでは言えないかもしれないが)。厳密なシビリアンコントロールによって運用されている軍隊であっても、政治家の不正行為に無条件に追従することまでは軍人に求めていないのが現代の民主主義国家の軍隊だ。政治家によって「不都合な事実」の隠蔽を指示された場合でも軍人は無条件で従わなくていけない、とするのはシビリアンコントロールとは言えない。

結局、今回の日報問題では誰も得した人間がいない。内閣の支持率は下がったがだからと言って野党の支持率が上がったわけではない。唯一の効果と言えるのは南スーダンのPKOから撤退したことだが、政治的には内閣の得点にも野党の得点にもなっていない。

同じ日に民進党の代表も辞意を表明していたけど、そもそも代表になったこと自体が間違いだと思っていたので「やっと辞めるか」という以上の感想はない。民進党という政党そのものにも期待してないし。

|

« 2016年6月の打ち上げ | トップページ | 2017年7月の打ち上げ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/196234/65591517

この記事へのトラックバック一覧です: 時期外れのサクラチル:

« 2016年6月の打ち上げ | トップページ | 2017年7月の打ち上げ »