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2019年3月24日 (日)

フォッサマグナ

さて今回は大井川鉄道。
非電化単線鉄道愛好会会長としてこれまで非電化鉄道の乗車につとめてきたが、その甲斐あってか東日本について言えばほぼ完了。東京から一番近い未乗車の非電化路線が大井川鉄道だった。しかし大井川鉄道は昨年5月に大雨のため末端の閑蔵-井川間が不通になっていた。この区間だけを残してもまた乗りに来なくてはいけなくなるので、復旧を待っていたのだが、この3月9日から運転を再開したので乗車することにした。これでフォッサマグナより東の非電化路線は全部乗車したことになる。


新幹線でまずは静岡へ。最近特に実感するようになったのだが、東海道新幹線の「のぞみ」が停車しない駅に行こうと思うと、意外に利用できる列車が少なく計画が本当に難しい。「ひかり」か「こだま」、あるいはその組みあわせを使うことになるのだがそれぞれ1時間に2本ずつしかなく、また「ひかり」の停車駅がまちまちなのでまるでパズルだ。しかも目的である大井川鉄道の本数もそれほど多くなく、おまけに始発駅の金谷駅は新幹線駅から遠い。というわけで、目的である大井川鉄道そのものよりもそこまでの往き帰りの行程造りのほうが大変だった。静岡駅で「ひかり」を降りて東海道線に乗り換え、金谷駅に。

本当はできればもう少し早い電車にしたかったのだが、これより一本前の大井川鉄道に乗るためには乗り継ぎの関係でかなり早い新幹線に乗らなければならず、諦めた。おかげで朝のほうは少し余裕ができたが、大井川鉄道の復路が日没ぎりぎりになってしまい、さらに帰宅がかなり遅くなってしまった。
今回の行程にはひとつ問題があって、乗り継ぎでそれほど待たされることがないのはいいのだが、逆にいうと食事をするヒマがないということだ。途中で時間をとってしまうと全体の行程が崩壊してしまうので、少しだけ時間があった静岡駅でおにぎりを買って大井川鉄道の車内でかじっただけになった。

大井川鉄道では青春18きっぷが使えないので、全線乗り降り自由の「大井川周遊きっぷ」4400円2日間有効を利用することにしていた。しかしご多分にもれず金谷駅での乗り換えは10分しかない。普通に考えると10分あれば充分きっぷを買って乗り換えられると思うのだろうが、三十一の経験上、こうした中小私鉄では有人窓口ひとつできっぷの販売などいくつもの業務を兼ねていることが多く、特に大井川鉄道ではSL列車目当ての観光客が窓口を占拠してしまうおそれがあった。10分でちゃんときっぷが買えるかどうか、また首尾良く買えたとしても発車ギリギリとなって席がとれないのではないか、それが今回の旅程で一番の不安要素だったのだ。JR金谷駅の改札を出て大井川鉄道の駅舎に入ると、案の定出札窓口には行列ができていたがそれほど長くない。よく見るとSL列車の乗車券急行券のためには別の窓口があるらしい。これならどうにかなりそうだ。何人か前の乗客がすこし時間がかかっていてじりじりさせられたが、時間内にきっぷを入手してまずは千頭行きの列車に乗り込む。車両はもと近鉄の特急車両16000系だ。
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金谷駅を出ると少しの間東海道本線と並行し、やがて大きくカーブして大井川に沿って北上する。大井川はとにかく河床が広く、その中を河道が蛇行しながら流れていく。金谷の市街地を抜けると両側は山地となり、大井川が刻んだ河谷に従って線路が敷かれている。まだ早春ということか山は緑色よりも茶色が強いが、ところどころ花が咲き始めていた。
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千頭駅で井川線に乗り換え。井川線はもともとナローゲージで、いまは大井川本線と同じく標準軌に改軌されているが、車両限界はナローゲージのときと変わっていないので車両は直通できない。ディーゼル機関車がふもと側からマッチ箱のような5両編成の車両をおしあげ、山側の先頭車両には運転台がついている。
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あいかわらず大井川に沿って走るが、川幅が狭くなるのと反比例するかのように谷は深くなり、ところどころダムが現れる。アプトいちしろ駅に到着すると最後部に電気機関車が連結され、ここから長島ダムまでの一駅は日本で唯一のアプト式で90パーミルの急勾配を一気に上がる。このためにこの一駅間だけは電化されている。
112s

長島ダムで電気機関車を切り放し、奥大井湖上、接岨峡温泉、閑蔵でだいぶ旅客が降りて行く。しかし井川線のハイライトは実はこの先ではないかと思った。深い渓谷、続くトンネル、かつての森林鉄道の面影をもっとも強く残している。終着の井川駅は道路脇の少し高台にあり、まわりに他の施設は一切みあたらない。階段を降りて道路に出、少し歩くと井川ダムが偉容を示している。
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あとは折り返し列車で千頭に戻り、大井川本線に乗り継いで金谷に戻る。それにしても井川線の車掌は大変だ。井川線の客車はマッチ箱のような小さい車両で、5両編成なのだが終戦直後の63型電車のように車両間に通り抜けできる通路がない。それぞれの車両には中央部にひとつだけ乗降扉があるのだが開くのも閉じるのも手動で「走行中は開けないように」という注意がたびたび放送されるのはその気になれば開けられるということだろう。井川線の車掌は、せいぜい20代前半と思しき若い車掌だが、駅が近づくと手近の扉を開けてホームにおり、運賃収受を終えたあとすべての扉を閉めてまわり、手近の扉に飛び乗って前方後方信号を確認して発車合図を車掌に出し、列車が動き出したあとで最後に扉を閉じて施錠し走行中は観光案内を含む車内アナウンスを行なう。いったん駅につくと停車から発車までの間ほぼ全力で走り回っており、今日のような日はまだましだが雨風の日や夜間、厳冬や猛暑の時期にもこれを続けているのかと思うと、本当に感心する。

帰りは新幹線を使わず、金谷から普通列車を乗り継いで帰京。金谷から東京まで4時間で帰れるというのはひとつの発見だった。


今回の旅程:
東京(0903)→静岡(1003) 465A
静岡(1021)→金谷(1054) 757M
金谷(1104)→千頭(1218) 17レ
千頭(1228)→井川(1418+4) 205レ
井川(1449)→千頭(1634) 206レ
千頭(1651)→金谷(1802) 34レ
金谷(1811)→熱海(2014) 5462M
熱海(2018)→新橋(2155) 1942E

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