煙も見えず雲もなく
今日の第一の目的は帰宅することだが、その前に少し寄り道をしていく。
せっかく徳山に宿営できたので、山口県東部の非電化路線、岩徳線と旧岩日線に乗って行くことにする。ついでにただひとつ残った鉄道航路、宮島航路を往復して来よう。
朝7時過ぎに徳山駅を出発する。車両はキハ47の二両編成だ。休日の早朝とあって車内はガラガラ。隣の櫛ヶ浜駅までは山陽本線を行くが、櫛ヶ浜駅構内ではすでに山陽本線と岩徳線は分離していて、岩徳線側の線路には架線は張られていない。よく知られた話だが岩徳線はもと山陽本線だ。柳井方面を迂回していた山陽本線を短絡するために敷設されて本線となっていた区間だが、戦時中に輸送力増強のため複線化される際に、勾配が厳しく長大なトンネルを含むこの区間では単純な腹付け線増による複線化ができなかった。ちょうど関門海峡トンネルの掘削中でもあり、新たにトンネルを掘らなければいけない岩徳線側の複線化は断念され、ローカル線と化していた海岸線側が複線化されて再度本線となり、かつて本線だった岩徳線は単線のままローカル線になって今に至る。実際に乗ってみると、なるほどこれを複線化するのは大変だろうなと実感する。普通に地上を走っている区間でも線路の脇には地積が乏しく土木工事で路盤を作るところから始めないと複線化はできないだろう。さらに大小取り混ぜてトンネルが多く、単線並列にするとしても同じようなトンネルをもう一揃い掘削しなければいけなくなる。ところが、岩徳線にはほぼ並行して山陽新幹線が走り、国道二号線が走り、そして山陽自動車道が走っている。あとから短期間で広げようとするから大変なので、最初から複線のつもりで敷設されていたら今でもこちらが幹線だったかもしれない。
長い欽明路トンネルをぬけると分水嶺を越えて下りにかかる。山の中で一旦停車。旧岩日線、現在の錦川鉄道との合流点だ。合流するとすぐトンネルをくぐり、さらにしばらく走ったところが川西駅。ここで下車。
川西駅は錦川鉄道の起点だが、とてもそうとは思えない棒線の無人駅。ホームは周囲からかなり高いところに置かれていて、見晴らしはいいが上り下りは大変だ。さすがに起点駅だからきっぷの自動販売機くらいはあるだろうと思ったが、ホームに置かれた自動販売機はJRのみで「錦川鉄道のきっぷは車内でお求めください」の掲示。
やがてやってきた岩国始発の錦川鉄道の列車は、ディーゼルカーの二両編成。整理券をとって乗り込む。車内は転換クロスシートで、観光客がけっこう乗っている。今きた線路を戻っていき、トンネルをまたくぐって分岐点である森ヶ原信号場を右に。ここからしばらく錦川に沿って遡上する。この渓谷が錦川鉄道の売りで、路線名も錦川清流線としているが、いちおう日本中めぐってきた三十一からすると土讃線の大歩危小歩危、肥薩線の球磨川、高山本線の飛騨川などにはかなわない。ちなみに三十一が最も愛する川沿いの風景は、宗谷本線の天塩川だ。錦川清流線ではところどころに「○○の滝」と称する滝が車窓から見られるが看板には「2010年命名」とか書かれていて萎える。名所にするために近年になって名前をつけたことが丸わかりだ。終着錦町駅では、大半の旅客がトロッコ列車に乗り換えるようだ。三十一はそのまま折り返す。
列車は森ヶ原信号場で岩徳線と合流し、川西駅を経て岩国まで行く。岩国で電化複線の山陽本線に乗り換え。列車は新しい227系3両編成だ。もちろん乗るのは初めて。岩国基地は後方なので見えないが、広島湾が右手に見えてくる。やがて宮島が現れる。宮島が意外に大きな島だというのは知識として知っていたが、実際に見てみて実感する。宮島口駅に到着。かなりの数の乗客が降りていく。三十一も降りる。
駅から宮島に渡るフェリーの乗り場は歩いて5分ほど。有名な観光地だけあって人が多い。駅から桟橋までの間に地下道が作られている。宮島フェリーにはJR西日本のものと、松大汽船のものがあってどちらも値段は同じ。だがひとまずJR側に向かって並ぶ。ちょうどフネが出たところだが、この時期はダイヤに関係なく定員に達したら出発するピストン輸送になっているようだ。次のフネが到着し、戻りの客を吐き出したあとに乗船。デッキに上がる。有名な鳥居は宮島の桟橋に向かって右手にあるので右舷側に小さく見えている。JR西日本フェリーは往路で鳥居にもっとも近づくというの売り文句で、実際かなり近くを通っているようで、スマホのズームでもまあまあはっきり撮影できた。
10分ほどで到着し、下船口でICカードをタッチして料金を払う。いったん建物を出て、今度は松大汽船の乗船口に向かう。往きと帰りで会社を変えてみたのは単に気分で、どっちでもよかったのだが。帰りは座ってぼーっと宮島と海をながめていた。海に浮かんでいるのは牡蛎の棚かな。いずれにせよ、これで天橋立、松島に加えて厳島も訪れたので日本三景を制覇したことになる。ちなみに今回のタイトルは軍歌「勇敢なる水兵」の出だしだが、この歌の舞台となったのは日清戦争の黄海海戦で、この海戦で日本海軍の主力として参加したのが橋立、松島、厳島のいわゆる三景艦だというまわりくどいつけ方。
本土に戻ってくると、あとは東京に戻るだけ。いったん宮島口駅に戻って、広島駅から新幹線に乗ればいいのが、ここでも三十一は寄り道をする。JRの山陽本線ではなく、広島電鉄を使うことにしたのだ。広電宮島口駅を出た電車は広電西広島駅から市内軌道に乗り入れて広島駅前まで直通運転をする。もちろん、JRより時間はかかるがいちおうこの区間は過去ブルートレインで何度か通ったことがあるのでまったく新規のこのルートを使うことにする。乗車したのは超低床の連接車でまだ新しい。
西広島までの宮島線では、専用軌道を走るので普通の鉄道と変わらない。床が低い車両が使われているので、自分の目線が低いのと、途中駅のホームが低いのが目につく。西広島駅からは市内線に入り併用軌道になる。ところがこの日、広島では不破ラーフェスティバルがあるとかで人通りが多い。主要駅では、普段の車内精算ではなく駅ホームに社員が出張ってきて精算やきっぷの回収に当たっていた。乗降時間を短くするためだろう。しかしそうした工夫をしてもなお、ダイヤは遅れていた。途中で降りて歩こうかとも思ったが、それでは一部区間が未乗車のまま残ってしまう。帰りの時間がきっちり決まっているわけではないので、動かない電車の中に大人しく座っておく。所定のダイヤより30分近く遅れて広島駅着。あとは新幹線で東京に向かうだけだが、すでにGWも後半、無理と思いつつ指定席を探してみたがやはり空席などない。そこで狙うのは広島駅始発の列車。調べてみると1時間に1本の割合で広島始発がある。次の始発は約1時間後、いまのうちに遅い昼食を済ませて、少し早めにホームに向かう。実際にホームに上がってみると、発車まで20分以上もあるのにすでに列車が待っていたので少し焦る。自由席1号車に乗り込んでみると二人がけのほうの窓際には空きが見つからなかったが、三人がけのほうは空きが多かったので適当な窓際を確保する。あとは4時間座っていれば東京まで帰してくれる。いつも言ってることだが、新幹線は偉大だ。
今日の旅程:
徳島(0710)→川西(0831) 2228D
川西(0839)→錦町(0938) 523D
錦町(0955)→岩国(1059) 528D
岩国(1110)→宮島口(1133) 1528M
宮島口(1151)→宮島(1201) JR西日本フェリー
宮島(1211)→宮島口(1218) 松大フェリー
広電宮島口(1228)→広島駅(1350) 広島電鉄
広島(1453)→東京(1853) 134A
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