2019年4月20日 (土)

「ハンターキラー」

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公式サイト

「潜水艦モノに外れなし」が売り文句だということだが、まあ「外れ」ではなかった。

たぶんバージニア級原潜が主役になる映画は初めてだろう。米海軍の協力で実艦をつかって撮影されたということだが、問題は敵役となるロシア海軍艦艇だ。アクラ級潜水艦はCGだろうけど、三十一にとっての影の主役は全編にわたって要所で登場するウダロイ級駆逐艦。「ネヴチェンコ」という艦名はもちろん架空のものだが、全景からアップから艦内描写まで、興味深い映像が多々見られたものの疑問なのは「この映像はどうやって撮ったんだろう」ということ。まさかこの映画にロシア海軍が協力するとも思えないし、セットとCGだろうか。

ストーリー自体はよくできていて映画としてはいい映画と言えるだろう。

個人的には、あたかも海中の様子が「見えている」かのような描写や、打ち出した魚雷に目標変更を「指示」している描写など、わかりにくい海中戦闘を観客にわかりやすく見せる演出は潜水艦映画の定石ではあっても、実際の潜水艦戦闘の実相とは必ずしも合致しないと思っている。

映像的には収穫は多々あって、米軍ロシア軍の艦艇航空機がいろいろ出てくるので、メディアで発売されたら買ってしまうかもしれない。ただあの両国艦隊の密集隊形は映画用だなあ。

追記:

ひとつ書き忘れていた。"Commander Glass" に「グラス指揮官」と字幕をつけてたけど、"Commander" は「中佐」だから。公式サイトに貼られている写真にも "J. GLASS CDR USN" って映ってるでしょ。

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2019年3月10日 (日)

「ファースト・マン」

久しぶりに映画を見てきました。
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月に初めて降りた人間ニール・アームストロングを描いた映画「ファースト・マン」だ。
「アポロ13」の時にも思ったことをこの映画でもやはり思った「顔が似てない」。ジム・ラベルはどちらかというとトム・ハンクスよりも先代の三遊亭円楽に似ているし、ニール・アームストロングはどちらかというとライアン・ゴズリングよりもチャック・ウィルソンに似ている。
まあでもそれは大して重要ではない。ただ最初に思ったというだけだ。
「予習してから行ったほうがいいかもしれない」という感想も見たが、三十一は特に予習するでもなく見に行った。考えようによっては40年かけて予習してきたとも言える。予習しすぎで先が読めてしまうので、アームストロング夫婦のドラマとして見たいひとは予習しないほうがいいかもしれない。一方で、宇宙開発の話として見たいひとはだいたい知っている話なので、結論としてはどちらにせよ予習は要らないのではなかろうか。
三十一としては、最初から人間ドラマには期待していなかったので宇宙関連シーンだけの評価になるが、とりあえず DVD/BD が出たら(値段次第だが)購入を検討するくらいは気にいっている。ただし、本来あるべきストーリーを飛ばしていきなり場面転換してしまう演出が目についた。例えば異常を起こしたジェミニ8号が帰還する場面はまるまるすっ飛ばされてしまっている。三十一は予習しているから補完できるけど、展開に戸惑う観客もあるだろう。

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2017年10月16日 (月)

「戦争のはらわた Cross of Iron」

戦争のはらわた 公式

1977年公開の伝説的な戦争映画。三十一が最初に知ったのはアバロンヒルから出ていたボードゲームのタイトル「クロスオブアイアン」から。スコードリーダーシリーズの拡張モジュールだったと思う。もちろんゲームのタイトルは映画に由来する。

東京での上映が今度の金曜日までということなので、雨の中を新宿まで出て見てきました。仕事の関係で土曜日は外出できなかったので、この週末で観るとしたら今日しかなかった。

まず、最後のシーンで頻繁に登場する T-34 だけど改造しているようには見えない。冷戦中の1970年代にどうやって本物の T-34 を入手したんだろう。もっとも T-34 でも T-34/85 のように見えた。1943年という時代設定とは少し合わない。それから、けっこうはじめのほう、爆撃しているソ連空軍(という設定)の単発機だが逆ガル翼から F4U コルセアのようだ。

映画の本題に戻ると、この時代のドイツでもやはりまだ階級が社会的に大きな意味を持っていたのだなあと思う。日本にいるとあまり意識しないけれど。プロイセンの貴族階級(ユンカーかな)出身というシュトランスキーの家族や一族には同じように軍に将校として勤務して鉄十字章を授章した者がたくさんいるんだろう。下士官で、おそらくは庶民階級出身のシュタイナーにとっては、鉄十字章のためにわざわざ安全なフランス駐留部隊からロシア戦線に志願してくるなんて理解できなかったろう。
連隊長はむしろシュタイナーに理解を示していたようだが、シュタイナーからしてみればそれも所詮将校階級からの同情あるいは偽善にしか見えない。それくらいドイツでの階級間の溝は深い。
それから、鉄十字章を申請するのに二名以上の証言と署名が必要というのは興味深かった。こうした厳密さというのはいかにもドイツらしく思える。

最初に紹介したとおり、東京での上映は今度の金曜までということだが、平日の昼間に時間がとれるならぜひ観るべきだろう。ペキンパー監督の演出による戦闘シーンをスクリーンで観るだけでも価値がある。

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2017年10月 9日 (月)

「ドリーム Hidden Figure」

観てきました。
実はすでに先週のことなのですが、感想遅れました。いろいろ忙しかったもので。

「ドリーム Hidden Figure」公式サイト

誰かも同じような感想を書いていたけれど、これはマーキュリー計画を舞台にして差別(人種差別、女性差別)問題を描いた映画であって、主題は宇宙開発ではなくてあくまで差別なんだな。
ただそれゆえに宇宙関係者以外の共感も得やすいだろう。少なくとも日本では「ダンケルク」よりも一般受けはしそうだ。

ただ三十一にとってこの物語の影の主人公はケビンコスナー演じるハリソン局長だ。ハリソン局長自身はもともと差別について関心はなかっただろう。彼は数字の権化であり、それだけが全てでそれ以外は本来どうでもよかった。しかし差別という、ハリソン局長にとってはどうでもいい問題が目的を達成するための阻害要因になっていると知るや否や、彼は激烈な反差別主義者になった。
合理的、合目的的な思考と差別は相容れない。
ただどうせ看板をぶち壊すなら、「有色 Colored」ではなく「白人 White」のトイレの看板を壊すべきだったと思う。

宇宙開発映画として観ても充分面白い映画だったことは間違いない。
ただし映像として新しいものは見当たらなかった。

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2017年9月16日 (土)

「ダンケルク」

映画「ダンケルク」 (公式サイト)

観てきました。

世間(そのスジの世間)では、ヤク改造のスピットファイアが主に英国面に堕ちた人々の間で評判になっていたようだけれど、同じ英国面でも海のほうに堕ちた三十一にとってまず目をひいたのはイギリス駆逐艦だった。
もちろん当時のイギリス駆逐艦はすでに残っておらず、フランスの記念艦 Maille-Breze (読み方わからん)をそれっぽく改造したそうだが、ぱっと見 「悪くない」と思った。船首楼船型、二本煙突、前後に背負式に装備された砲塔。台詞で登場した艦名は「バンキッシャー」だったがこれはおそらく Vanquisher で、いわゆる V 型駆逐艦(時期的に第一次大戦型)のうちの一隻ということだろう。
実際に「演じた」 Maille-Breze は 1950年代建造の Surcouf 型駆逐艦ということだが、粗を探せば「マストに電子装備らしきあれやこれ」とか「後甲板に VDS らしきもの」とか「全体に上構のシルエットが高い」とか色々文句をつけるところはあるにしても、CGを使わず実艦を使ったことを考えればよく出来ている。
実際のダンケルク撤退戦からすでに 77年も経っており、かつて「戦艦シュペー号の最期」に「本人」が登場したような芸当はもはや不可能だ。

さて映画の感想に移ろう。
アカデミー賞最有力との前評判だが、それは多分海のむこうでの話だろう。日本の単なる「映画好き」にはほとんどの場面が意味不明に見えるだろう。それくらい背景説明が無い。台詞にも出てこない。「これくらい知ってるよね」という前提で全て話が進む。というか、進むような話自体がない。ただひたすら戦闘と兵士や民間人の悪戦苦闘と死が描かれる。
かと思うと、イギリスで徴用された民間船がダンケルク沖合に到着したところであたかも「めでたしめでたし」とでも言うような演出がなされる。このあとの戦闘も多少描写されてはいるもののエピローグのようだ。実際には民間船も動員した撤退とそれを阻止しようとするドイツ海空軍の攻防がもうひとつの山場であったはずなのだが。

要するに、ドイツ軍のフランス侵攻から英軍の撤退という一連のキャンペーンの中から、ダンケルク撤退戦の、さらにその中のごく一部の時間帯だけを前後から切り放して目の前に放り出されたような印象。突然話が始まって突然終わる。背景を知らない人間には厳しい映画だろう。評価は分かれると思う。

自分は、船と飛行機を見るため「だけ」に DVD/BD が出たら買うかも知れない。

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2017年4月 2日 (日)

「この世界の片隅に」

今さらながら観てきました。

公式HP

戦前から戦中(戦後すぐ)の呉の光景がふんだんに登場する。
「ああ、これと同じ構図の写真があるわ」という場面もしばしば。

戦時中の普通の生活の様子が淡々と描写されているが、その中でもやはり戦争の厳しさがところどころにちりばめられる。

いい映画だということは間違いない。
ただし、終盤の展開はもう少し違った形でもよかったと思う。

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2016年2月14日 (日)

「火星の人」/「オデッセイ」

この週末に映画を見に行こうと思っていたのだが、春の嵐が吹き荒れて出かけるのに躊躇してしまった。まだ風は強いようだが雨はやんだので思い切って出撃。

原作はハヤカワ文庫から出たときにすぐ買って、わりと早いうちに楽しく読み終えた。その後、原語版を Kindle で読み続けていて、そちらも読み終えたら感想を書こうと思っていたのだが、読み終える前に映画が公開されてしまった。
原作のあとがきで「映画化進行中」という情報を得たときには、正直言って不安しかなかった。この内容を映画の長さに収めるのは無理だろうと思ったのだ。もし無理やり詰め込もうとすると、似ても似つかない内容になってしまうだろう。この小説の真髄であるハードさが影を潜め、エンターテインメントが前面に出てしまっては台無しだ。

結論として、映画ではいくつかキーになるエピソードが省略されていたがストーリーのアウトラインは原作をほぼ踏襲していたようである。中国のロケットが救援用に使用されるようになった経緯と、火星と地球の連絡手段になっていたパスファインダーを壊してしまうくだりが省略されていた。それでも全体的に駆け足になってしまっている印象はぬぐえない。上映館を調べているときに目に入った感想に「わざわざ中国の力を借りなくてもいいのに」というのがあったが、そもそも現代の宇宙開発における中国の存在感の大きさを認識していない(ちなみに原作にも日本はまったく出てこない)のだろうけど、重力カタパルトのために地球近傍をフライバイする宇宙船エルメスに補給品を届けるためには並みのロケットではその速度に追いつけないということが映画の中でちゃんと説明されていないのが大きな原因のひとつだろう。とにかくこうした説明がされずに派手なエピソードをつぎはぎにした感が否めない。そういう意味では不安は的中したわけだ。三十一は原作を読んでいるから主人公やその他の登場人物のそれぞれの行動の理由づけがわかるが、予備知識なしに映画だけ見た人には消化不良だったのではなかろうか。

個人的には、テレビシリーズなどで十分時間を使ってドラマ化してほしい。特撮は多少チャチでもいいからさ。

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2014年12月19日 (金)

「インターステラー」

http://wwws.warnerbros.co.jp/interstellar/

上映スケジュールを調べようとして初めて3時間近く(169分)もある映画だと知りました。

これは SF というよりファンタジーだなあ。少なくともハードSFではない。
一度も姿を現さない「五次元人」がいないと成り立たないストーリーだ。まあこういう存在自体は「2001年」シリーズでも出てきたのでそれ自体が必ずしも反則とは言い切れないけれど。

はじめ、舞台は地球じゃないんじゃないかと思ったんだが、どうも近未来の地球らしいと確信したのはかなり過ぎてからだった。いかんなあ、この制作者は SF者の気持ちをわかってないよ。舞台が地球なのは当然だと思っていないか? SF者にはむしろ地球外惑星に移住した後の話という発想が自然に思い浮かぶのだが。

それから人類が絶滅に瀕していた理由が判然としない。気候変動だとは思うのだけど、それがどうして起きたのだろう。温暖化かなあ。気候変動の原因を取り除こうという試みはされなかったのかね。

もうひとつ、地球の重力30%増しの惑星からブースターも使わず着陸船ひとつで周回軌道まで脱出できるという現在の技術ではとても実現不可能なスーパー宇宙船を建造するだけのテクノロジーがあるのに、どうして地球から打ち上げられるときは少なくとも2段のロケットを必要とする現在とほとんど変わらないテクノロジーレベルになってしまうんだろう。あまりにアンバランスだ。特定の分野だけ突出して発展したとかいうわけじゃない、やってることは同じなのにね。

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2014年12月15日 (月)

「フューリー」

http://fury-movie.jp/

この日曜日に有楽町で観てきました。
予告を観たときには「公開されたら観に行こう」と思うのだが、気づくとすでに公開が終わっているというパターンが三十一には多い。これも危うく忘れそうになっていたので慌てて観てきた。もうひとつ、「インターステラー」も観たいなあ。

以下ネタバレ。

アメリカ版「黒騎士物語」か?

途中にとってつけられたラブロマンスもどきはどうでもいいとして、本物のタイガーIが出てくるとか戦闘シーンがリアルだとか下馬評は高かった。確かに、歩戦協同の陣地攻撃とか(この直前の場面で「この茂みはアンブッシュに最適だなあ」と思っていたら案の定待ち伏せをくっていて驚いた)、市街地戦闘とか、1両のタイガーIに対して小隊で立ち向かう対戦車戦闘とか(もともと4両あったシャーマンはうち3両が撃破されてようやく1両のタイガーIを仕留めた)、なかなか興味深い場面が目白押しだった。

だけど、最後の戦闘はどうかなあ。1945年4月の米軍がどうしてあそこまで追い詰められた戦闘をしなければいけないのか、理解しづらい。戦闘シーンは派手だけれど、そこに至るまでのシチュエーションに無理がないか。逆に、アメリカの大軍に戦車1両で立ち向かうドイツ軍、という組み合わせのほうがよほどしっくり来る。

エンドロールの背景に流れた映像は、実際の記録映像みたいだ。

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2011年5月29日 (日)

レッドバロン

昨日のことだけど、久しぶりに映画を見てきた。東京から千葉に転勤になって以来、会社帰りに映画館に寄っていくという芸当ができなくなってしまった。

んで、見たのはレッドバロン。このタイトルでわかる人はわかるだろうけどわからない人はまったくわからないだろう。第一次世界大戦のヒコーキものだ。

レッドバロン公式サイト

切符を買うために窓口に並んでいるときや、エレベーターを待っているときに周囲にいたのは、普段きっと映画なんかみないであろうと思われるそこそこ年を食った男性が多かった。
このひとたちは、いつもはきっとカメラを抱えて飛行場のあたりをうろついてるんだろうなあと、なんか納得してしまった。

個人的には、この映画はハリウッド製ではなくドイツ製ということで、金はかかっていないかもしれないが内容はきっちり作り込んでいるだろうと期待していったんだが、一番最初に出てきたセリフが明らかに英語だったのでちょっとがっかり。

話は実質的に1916年という戦争もすでに半ばの時期から始まっていて、背景の説明があまりない。リヒトホーフェンのフルネームであるマンフレート・フォン・リヒトホーフェンも(字幕を見ているかぎりでは)ほとんど呼ばれることがなく、日本の観客の中には最後まで主人公のファーストネームがわからなかったひともいるのではなかろうか。

まあそんなことはこの映画を見に来ているオジサンたちにはどうでもいいことで、問題はヒコーキや空中戦のシーンがどれくらい作り込んであるかである。

ドイツ側で出てきた機体はおそらくアルバトロスと、フォッカー三葉機のように思われる。イギリス側ではソッピースと説明があったがソッピース・キャメルかなあ。途中で出てきた爆撃機は一瞬ゴータかと思ったけど、連合軍の機体だからそんなわけない。空中戦のシーンはアップが多すぎて展開がよくわからない。状況説明を兼ねた引きのシーンがもう少しあってもよかったように思う。そうでないと見ているほうの勉強にならないぞ(目的が違う)。

正直言って不満はたくさんある。例えばリヒトホーフェンは初め騎兵隊に入っていて戦争開始後に飛行隊に移ったとか、観測気球の周囲には対空機銃が多数配備されていて気球攻撃はかなりリスクの高い戦闘だったとか、パイロットが安易に機体を見捨てないようにという理由でパラシュートの装備を軍が許可しなかったために機体が火を噴いたらまず助からなかったとか、そういうストーリーを理解するために必要な肝心な情報がまったく提供されていないように見える。

ただの悲恋ものになっちゃってるような気がして残念。でも DVD か BD が出たら(値段しだいだが)買うかもしれない。

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