2007年2月10日 (土)

天皇機関説

厚生労働大臣が女性を「子供を産む装置」と発言したことが物議を醸している。三十一はこの発言自体がそれほど問題だとも思わない。最初にニュースでこの話を聞いたときに実際に話をしている映像を見たのだが、伝えられている部分だけを切り取ると問題発言に見えるけれど全体の文脈を見ればそれほど問題とは思えない。
とは言え、三十一には別にこの大臣をかばう義理はないし、不用意な発言で攻撃材料を提供してしまったことは確かだからある程度自業自得の部分があると思う。

ところで、この騒動について考えているうちにもうひとつの騒動を思い出した。思い出したといっても書物の中で読んだだけなのだが、その騒動というのが戦前の「天皇機関説騒動」である。天皇を「機関」とした法学上の学説が「不敬」として批判され、機関説論者の美濃部博士が貴族院議員を辞職せざるを得なくなったという、通常の文脈では戦前に自由な学問が抑圧されて皇国史観一色に染まっていく象徴的な事件とされている。
今回の「女性装置説」批判は、この「天皇機関説」批判と構造がそっくりである。例えば「天皇機関説」を見てみると、国家統治というシステムの中で「天皇」が果たしている機能を考えるときには天皇をひとつの「機関」と考えるのが妥当である、というものであろう。これは天皇の神聖さとか権威といったこととは全く関係なく、むしろ純粋に「天皇」の機能を考えるためにはそういった要素が邪魔になるので、あえてそういう部分を抽象化して考えると天皇もひとつの「機関」になる。こういった抽象化では、当然のことながら細かいことが見えにくくなる。しかしそのことによって逆に本質が浮き彫りになってくる。ここでいう本質というのは、国家統治システムの機能を分析するという目的における天皇という存在の本質であって、神聖不可侵だとか万世一系だとかいうご託宣は検討の対象にはならないのである。そういったものが「ない」と言っているわけではなく、それは単に「別の話だ」と言うのに過ぎない。
しかし「天皇機関説」排撃論者は「神聖不可侵な」天皇を「機関」扱いするのはけしからん、と故意かそれとも本気だったのかわからないが本来別のレベルの話をごっちゃにして批判して言論を封殺したのである。

ここまでの説明の本筋を変えずに、単語を少し変えてやるとそのまんま「女性装置説」批判の話になることがわかるんじゃないかな。

ところで、この大臣は「結婚して子供を二人以上もつという健全な願望」と発言してまたまた物議を醸した。問題になった「健全」は「願望」にかかるはずなので三十一はこれも大した問題じゃないと思ってはいるが、「健全」「不健全」という価値判断をア・プリオリに普遍的なものと考えているふしがあってそこがちょっとひっかかる。そもそも「不健全ですけど、なにか? 」という人には効果がない。世の中には「健全でありたい」という願望を持たない人もいるんだということを理解するべきだろう。実は三十一もそうかもしれない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年2月 1日 (木)

シーローンチは燃えているか

野尻さんのボード でシーローンチによる打ち上げが失敗したというニュースを知る。ロケットが爆発する映像がさっそくYouTube にアップされていたのは、こういうご時世だから今さら驚きはしないが、Spaceflight Now の記事の末尾にまで YouTube へのリンクが貼ってあったのは少し驚いた。

シーローンチと言っても一般にはあまり知られていないかもしれない。太平洋の真ん中、赤道直下の洋上に建設した舞台からロシア製のロケット「ゼニット」で衛星打ち上げを行なうアメリカの企業である。おもにボーイングが出資しているらしい。

一昔前の感覚でいうとアメリカの会社がロシアのロケットを使うなんて考えられなかったが、何せ現時点でのアメリカの主力ロケットのひとつアトラスVのメインエンジンにロシア製のRD-180が使われる時代だから、そう驚くにはあたらない。

打ち上げにもっとも有利と言われる赤道直下の洋上から安価で信頼性の高いロシア製ロケットを使って衛星を打ち上げるという事業は、新たなビジネスモデルとして注目されてきた。これまではうまく行っていたが、ここにきてつまづいたということか。打ち上げの途中で問題が起きたのだったらまだよかったのだが、点火直後に射点で爆発してしまっているので打ち上げ施設そのものも被害甚大(全損という観測もある)。不死鳥のように甦るか、それとも案外あっさり事業を投げ出してしまうか、目が離せないところだ。

ところで、このニュースを日本のマスコミがどう伝えているかと思って某新聞社のニュースサイトを探してみたが、国際欄、経済欄、科学欄のどこにもとりあげられていなかった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年1月23日 (火)

3/18 JR時刻改正

3月18日に予定されているJRグループのダイヤ改正の概要が、今月発売された鉄道雑誌に一斉に掲載された。「一斉に」と言えるくらいたくさんの鉄道雑誌を購読してるのかというと、実はその通りである。
それはそうとして、そのダイヤ改正の中で三十一がもっとも注目したのは、普段通勤に使っているJR常磐線へのグリーン車連結ではなく、また特急「東海」廃止でもなく、コンテナ急行貨物列車の26両連結列車運転区間が東京~岡山から北九州まで延伸されるという記事であった。
これまで岡山以西は24両1200トンが最大だった。この区間で26両1300トンが実現できなかったのは、広島の少し東側、いわゆるセノハチ(瀬野~八本松)の急勾配のせいだ。JRになって新製された強力機関車EF200を使えばこの区間での1300トン列車も無理な話ではなかったのだが、この大パワー機関車が引く列車が何本も行き交うには変電所の能力が不足していたのである。かねて計画されていた能力増強がこのたび完成し、上下あわせて19本の1300トン列車が岡山以西に入ることになった。そういや、これまでもっぱら北海道直通列車に使われていたEH500が門司に配置されるようになったそうなので、こういう1300トン列車をEH500が牽引して東海道をのぼってくることになるのかな。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年1月20日 (土)

「亡くなる」って言うな

かつてウォークマンのCMで一世を風靡したサルのチョロ松が死んだそうだ。
ところが、今日のNHK「@ヒューマン」で司会者が今週のニュースとしてこれを「チョロ松が亡くなった」と伝えていた。

うーーーん、三十一の日本語の感覚として動物に「亡くなった」というのは物凄く違和感がある。だいぶ昔にもそんな議論がどこかであったような気がするんだが・・・
例えば、三十一の家で10年飼っていた猫が死んだときでも「亡くなった」という表現は思いつかないだろう。

こういう動物を擬人化した表現は、逆に人間の傲慢さを示しているような気がして仕方ない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)